体温
雨の音しか聴こえない。
多分もうすぐ授業始まる。
「かいちょ……」
包まれたタオルは会長の匂いがした。
髪の毛から落ちる雨の雫を全部吸っていく。
ぎゅっと抱きすくめられたまま動けないあたしは。
冷えてきた体に会長の温もりが気持ち良くて、眼を閉じた。
「……世田谷、」
「ん……?」
「……透けてる。」
「んん……?……ええ!?」
「見ないようにはしているが、……このままだと見える……。」
朝から雨ザーザーで。
案の定あと一歩の所で滅茶苦茶降られて。
教室に辿りついたは良いものの授業なんか受ける気にもならなくて。
た……体操服……着替えるくらいしかない……!!
「少しは乾くかと思ってこうしているが……。」
「何時間かかるんだよ!!」
「俺は良いけど。」
「……あたしもいいけど」
違うッ!そーじゃなくて!!
「み……見たの?」
「不可抗力だ。」
「……見たの」
「でも他の!特に男には!!見せたくない!!絶対!!!」
水気を取るためらしい両手にぐっと力がこもる。
そのタオルもだいぶ湿っぽくなって生あったかくなってる。
たぶん他の人からすればもっといい方法があるだろうに、この人は。
自分の体温であっためて乾かそうなんて、最初っから無理だってことくらい気付いてる筈なのに。
「……いっそ脱ぐか……」
「待て!!血迷うな世田谷!!!」
「ウソウソ。会長、ごめんけどあたしのカバン持ってきてくれる?」
「……、そうだな。」
ふっと体が軽くなる。
ふっと体が寒くなる。
「タオル……こっちの、新しい方をかけてろ。」
「ありがと、ごめんね」
「……朝、正直、ヤバいと思った。」
「そんなにスケスケでしたか……はぁ……」
がっくり肩を落としたあたしを。 今度はタオルのないまま、会長はもう一度引き寄せた。
さっきとは違う高めの熱が再びあたしを包む。
濡れた制服が肌に貼りついて。
会長のシャツもまた少しずつ濡れて。
ふたつの体の温度が、同じになっていく。
「……」
「……ヤバい。」
「……」
鼓動が、耳元で、音を立てて、
呼吸が乱れてるのはあたし?
それとも、
「……」
あなた?
どちらともなく合わせた視線に、瞳が潤む。
そこで、何かを遮るかのように会長が、ゆっくりと瞬きをした。
「……、教室行ってくる。」
「……はい」
「冷えるから、タオルちゃんと着て。」
「はい……」
「……こんな世田谷見せたくないな。」
「……」
「そんな顔、俺以外には見せるなよ……?」
「……、はい……」
ぴしゃん
引き戸が閉まると同時に腰が抜けたように座り込んだ。
会長が、それは、会長があたしに女を感じたってこと?
2回目、抱きしめられた時の会長は確かに男だった。
そのまま取り込まれてしまいそうなほどに男だった。
「あつ……」
とっくに離れた体がまだ火照っていた。
戻ってくるまでに少しは冷まさなくちゃ。
じゃないと、たぶん。
「……」
あなたと分け合った熱で、くらくらする。
体温
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
160925
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