五月の陽射し


長い休みの間にいつのまにか季節は進んで

川べりの枝は目一杯緑の葉を揺らしている





「もっとこっちに寄れば?世田谷。」

「いい、だいじょうぶ」





畏れ多くて近づけない

君の周りにはナゾの空気がある

勿論それだけじゃない

他の女子の目もあるんだけど

5月のくせに、日暮れのくせに

日差しがキツくて





「……眩しそう。」




オレンジ色の直射日光が右半分に直撃する

腕まくりしたのに全然涼しくなんかない

むしろ暑い

それは半分は君のせいでもある

涼しい顔をして木陰を歩く人

木漏れ日をきらきら詰襟に纏わせる人





「まぶしい」

「だろう?」

「あっつい」

「だからこっちに来いと。」

「でも会長人気者だから」

「……。」





世界を分ける日なたと日かげの境界線

おかしい、どっちかって言うと君の方がこっち側歩く人なはずなのに

なんでそんな眩しそうにあたしを見るの

目を細めてうらやましそうな顔するの

なんで?





「葉桜は毛虫が落ちて来るぞ。」

「うわああイヤー!!!」

「……やっとこっちに来た。」





なんで嬉しそうな顔してそんなこと言うの

なんで?





「はぁ……すずし……風……」

「俺と帰ったからってなんだと言うんだ。」

「え……?」

「独りで帰るのが寂しい時だってあるぞ、そうだろう?世田谷。」





長く伸びた枝の先まで

たっぷりはらんだ緑の葉っぱ

熱くなったアタマを冷ますように

やさしく新緑の風が吹く

否定しないでって無言で囁く

一歩ずつ君に追いつく

会長と並ぶ





「……。」

「……」





会長と並んで歩く。





「……面白話、世田谷。」

「でたよ会長の無茶振り……」

「じゃあなんでもいいから、世田谷。」

「なんでもいいからとな……!?」

「なんでもいいから。……世田谷。」





歩幅がちょっとだけ、小さくなった。

西日がビルの陰に潜んでいった。

境界線はいずれ薄れていくだろう。

夜の帳があたしと会長の境目を、消してくれるだろう。




五月の陽射し
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
170507


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