変身


水撒きしたグラウンドの

土のにおい





「あちー」

「だりー」

「グラウンド20周ー。」





化け物でも見るような目でこちらを見る。

今までだってそうだったじゃないか。

フェンス越しの女子の

視線と歓声

ジャージを一枚脱ぐと、初夏の風が肌を撫でた。

今までだってそうだったじゃないか。

去年までだってそうだったじゃないか。

何も変わったつもりはないよ?

俺は何も変わったつもりはない





「このクッソ暑いのによく走ってんね会長!」

「やっと日誌が書けたのか、世田谷。」

「なんとか……」

「お前こそ毎日毎日よくやるな。」

「やらせとんのは誰やねんちゅーハナシですわ」

「……前から気になってたんだが、なんでそんなに関西弁が上手いんだ?」

「ウチお父さんが神戸なんで……でも巧くはないよ、たぶん」

「俺には分からんが巧いと思うぞ。」

「そんなとこ褒められてもなぁ……」





仰ぐ、空は青く。

君の細めた眼は眩しく。

変わったつもりはないよ。

でも、君が現れた。

去年とはまるで違う、季節が始まった。

燃えるようなグラウンドの熱。

誰が、僕のどこに火を点けたの?





「褒められたいのか。」

「そりゃ貶されるよりはよっぽど」

「ふーん……。」

「ほめられて伸びる子なんで!あたし!」

「すまない、何も思いつかなかった。」

「もう!!会長のアホ!!言うと思ったよ!!!」





君が僕を変えていくの?

俺にアホなんて言う奴はいなかったし

こんなにバシバシ叩く女子はいなかったし

普通に楽しいと思える時を過ごしているし

お前が俺を変えたの?





「手塚部長が女子とイチャついてる……!」

「明日は雨だな」

「いや、地球が滅びるよ。ふふっ」

「いや滅びたら困ります!オレも女子とイチャつきたいです!!」

「……世田谷、お前が決めて良いぞ。」

「本当?じゃーグラウンドもう5周」

「えー」

「あとあたしに一人ずつなんか奢ってくださいお待ちしてます!!」

「じゃあついでに俺もお待ちしてます。」

「……あんな手塚、僕見たことないよ」

「オレだってないっス」





水撒きしたグラウンドの土のにおい

妬み嫉みの種になることは避けて深いコートの裏

世田谷が俺を変えるの?

これからも

この先も





「世田谷の褒めるところ、解った。」

「は!?なに!?」

「……ノリが良い所。」

「……びっみょ〜〜〜〜〜〜」

「俺に褒められたいならまだまだだな。」

「……それ越前のヤツ……」

「まぁ、頑張れ。」



いじけて尖らせた口元を、ふっと緩めた。

俺もまた君を、変えようとしているの?




変身
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
170618


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