歌う人
世の中に溢れてるメロディ。
君が口遊めば、すぐに君の歌。
「……、」
「あ、ごめんうるさかった?」
街中で、店先で、電車やバスの中で
無意識に始まる君の歌
家の中だとひとりリサイタル状態。
……今時リサイタルなどと言うのはジャイアンとウチの世田谷しかいない。たぶん。
「いや、大丈夫だ。慣れてるから。」
「いやー静かだとつい寂しくって歌っちゃうんだよね」
「あいかわらず全力で歌ってるなーと思って。」
「やっぱうるさかったんじゃん」
「いや……子守唄……の逆?」
「やっぱうるさかったんじゃん!!」
いやいやいや、世田谷なら。
歌声ひとつで俺を眠らせることも覚醒させることもできる。間違いなく。
何故なら俺が、歌っている世田谷のことを好きだから。
……だから本当は、歌うのはプライベートな空間だけにして欲しい。
「うるさいなんて言ったことないだろう。ただ所構わず歌うのはちょっと……。」
「やっぱうるさいんやないかーい!」
「そうだ、俺世田谷の歌も好きだけどツッコミも好きだぞ。」
「ありがとよ!!好きのポイントがマニアック!!」
「俺の温度低過ぎるボケには世田谷くらい勢いのあるツッコミじゃないとバランスが取れない。」
「自分で言う!?温度低すぎるボケって!!」
君が口遊めばすぐに君の歌
その歌をあまり他の人には聞かせないで。
それともどこかで君が歌い始めたら、俺がその口を塞いでしまおうか?
「ところで洗濯物は……。」
「わかったよ!静かに干しますよ!!」
「いや、なんか歌って世田谷。もう起きてるから。」
「……じゃあリクエストは?」
「そうだな、うーん……、」
世の中に溢れているメロディ
君が口遊めばすぐに君の歌。
俺の大好きな、君の歌を歌う人。
歌う人
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
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