あなたをもっと知りたくて
3か月前は真冬の空気
3か月先は真夏の雲
明日のことさえ分らないくせに、もっと遠くの未来を見ている。
通りの先に見えている、駅を見るようなくらいの気持ちで。
「アイス食べよーよてづかー」
「いきなりそれか?」
花弁のような袖から伸びる腕
朝方の雨が嘘のような街
到底簡単ではないことを、いかに簡単であると思い込むか。
白いスカートが俺の手を引いて駆け出した。
信号はまだ青だ。
「ドイツってアイス美味しい?」
「……ドイツでアイスは食べたことがないな。」
「そうなんだ。やっぱりソーセージ?シャウエッセン?」
「いや……フツーに普通のご飯食ってるんだが……。」
「ビール!?ビールなの手塚!!」
「お前と同い年だぞ世田谷。」
背中にもたれかかってくる重さに懐かしさを感じて
空を見上げたふりをして暑くなった心を誤魔化した。
いつもの日常だったものは斯くも容易く
離れてしまった今それはこんなにも尊い。
「ドイツのアイス美味しいかなぁ……」
アイスの向こうに君は違う物を見ている
俺が見ている景色を想像して、見ている。
うん、いつか。
いつか。いつか。
そう言っている内に過ぎ去ってしまいそうな時間
伏せた睫毛の先に、初夏の日差しが反射する。
「アイスだけ?世田谷。」
「ん?……ビール?」
「ビールはアウトだろ。」
「ビール苦くってあんまし飲めないしー」
「いや、今の発言もアウトだろ。」
3か月前は真冬の空気
3か月先は真夏の雲
訪れる四季と変わりゆく街の姿
俺はなんでそこにいないんだろう。
あなたをもっと知りたいのに。
「あれ?また背伸びた?」
「少しな。」
「いいなー手塚ばっか成長してる」
「世田谷は、」
「今年の身体検査全ッ然変わってなかった」
「……少し可愛くなった。」
「……マジで!?」
「本人がそのリアクションとはどういうことだ……。」
「いやそんなん自分じゃわかんないし!可愛いなんて言ってくれんの―――」
あなたをもっと知りたい。
近くにいた時よりも貪欲に。
居ない時間を埋めるほどに。
あなたをもっと知りたい。
「俺だけだろう?」
「……、うん」
ああ、―――それが結論。
到底簡単ではないことを、いかに簡単だと思い込もうか。
遠くに見えるあの駅を見るくらいの気持ちで。
未来を。
見ている。
あなたをもっと知りたくて
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
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