言葉の力


『正直言っていい?オレアイツ大っ嫌い』





打ち込まれた文字くらい、正直に口に出して生きられたなら。





「……大っ嫌い」





自分に言われたわけでもないのに傷付いている自分がいる。

試しに声に出してみた言葉が部屋に空しく響いて、消える。

見えない相手に自分を隠して自由に言葉を投げつけられる時代

オトナもコドモも

オトコもオンナも

自分の発した言葉が巡り巡って、戻ってくるかもしれない時代

ぽいっと投げ出されたスマホは布団の波に消える。

無機質に並べられた文字が無差別な凶器に変わる。





『オレもダメ。生理的に無理』

『ちょっとテニスがうめーだけじゃん』

『調子に乗っててムカつくわー』

『ハイハイ、勝ち組ワロスワロス』





そりゃ思い通りの人生なんかじゃない。

なりたい筈の自分じゃない。

でもそれは画面の向こうで書いてる誰かだってそうで、

逆に言えば画面見て傷付いてる人だってそうなんじゃない?

傷付けていい人間なんて世の中に誰もいないよ?





「……っしょっと」





手を伸ばしてスマホを引き上げる。

誰かを傷つける言葉があるなら

君を勇気づける言葉も必ずある





『てづかー、お疲れ様。おめでとう』





打ち込むことさえもちょっと躊躇ってしまうような言葉

手を伸ばして、君を引き上げる。

傷付けられて傷付かない人間なんて世の中に誰もいないよ。





『今日もかっこよかった。今日も大好き』





離れた相手に言いたいことをすぐに伝えられる時代

隣の部屋でも、二駅先でも、地球の裏でも。

そのうち宇宙の何処かでも。





「―――世田谷!?なんだお前、藪から棒に……!」

「あれ?寝てたんじゃないの?夜中でしょ?」

「……メールが、……来たから。」

「大好きよ、手塚」

「だからなんなんだ……。」

「だからまた次の試合もがんばってね」

「……ありがとう。」





顔が見えなくても、離れてても、例え喧嘩したとしても。

あたしは君に伝え続けよう。

大好きよ手塚。

知らない誰かの言葉なんか吹き飛ばしてしまえるくらいに、伝え続けよう。

そしたらいつかあたしにも、巡り巡って言葉が返ってくるのかもしれない。

そうやってあたしたちの暮らしは出来ているのかもしれない。本当は。


言葉の力
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
170611


- 62 -

*前次#


ページ:



ALICE+