生きる。


芝生の上に寝転がっていたら、飛行機雲が空を切り裂いていった。





「暑いのに何やってるんだこんな所で。」





いつもの呆れ顔で君がやってきた。

大好きなオレンジジュースを持ってやってきた。





「あの空の向こうにでっかいガラスの蓋があって」





途方もない話を君は平然とした顔で聞いていた。

あたしのオレンジジュースをちまちま飲みながら聞いていた。





「神様がそっからのぞいて、今日のこいつはこの仕事をさせようって決めてんの」





神様にも仕事がある。そう思うと結構世知辛いものだな。

誰に給料もらってんのか知らないけど神様も仕事しないといけない。

それはさておき。





「じゃあ今日の俺の仕事は?」

「……あたしに付き合うこと?」

「なんで疑問形なんだ。」

「あたし神様じゃないし……」

「じゃあ世田谷の仕事は?」

「手塚のこと好きでいること」





耳を澄ませても

胸に手を当てても

神様の声は聞こえない。

自分が信じた役割こそが今日あたしが与えられた仕事だと思って

今日を、生きる。





「楽だな……。」

「なんだと!?」

「そんなの毎日だろう?」





途方もない話を君は平然と聞いていた。

そうだ君は昔からそういう男なのだった。

飲みかけのオレンジジュースを堂々あたしに渡してくるほどには。





「では俺も俺の勤めを果たそうか。」

「それ本当に手塚の仕事?」

「世田谷にテニスに付き合ってもらう。」

「やだよ」

「悪い、今日の俺の仕事だから。」

「暑いもん」

「わかった、じゃあ世田谷にテニスをさせるのは俺の一生かかっての大仕事だということだ。」

「今日は?」

「芝生に寝転がって空でも見る。か。」

「楽じゃーん」





この青い空の向こうにでっかいガラスの蓋があって。

神様が毎日そこからニヤニヤしながら皆を見てる。

全員分365日決めるの超大変なんだよと項垂れながら。

あたしたちを見てる。

時折試練のようなものを与えながら、でも、ちゃんと最後幸せになれるような役割を、決めている。




生きる。
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
170806


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