Miss Understand


JRが止まって、駅の中は人でごった返していた。





「もしもし?……そう、電車が止まっていて―――」





すぐ右横で手塚が家に電話をかけていた。

外はもう少し薄暗くなっていて。

ヘッドライトに照らされる雨粒が白く、無数の線を描いている。





「少し待つが迎えに来てくれる。ありがとう世田谷。」

「一緒にいるよ」

「……、ありがとう。」





多分もう寒いからとか、暗いから、先に帰れって言いたかったんだと思うけど。

その言葉を遮った。

短い靴下の足元が、濡れて、すーすーする。





「何か飲むか?」

「大丈夫」

「……もうちょっとこっちにおいで。」

「うん……」





家で待っても良かったのに。

店で待っても良かったのに。

気遣わなくていいのに。

半歩分傍によると、でも、体温のお蔭か少し暖かい気がした。

そっと顔を伺う。

目があって、表情を緩める。





「風邪を引いたら俺が世田谷のおじさんに怒られる。」

「わかった。がんばる」

「……そんなに俺と一緒にいたかった?」

「そんなに早く帰って欲しかった?」

「一人でどうやって時間を潰そうかな、とは考えていた。」

「……一人で待つのはさみしいんじゃないかなって思うから……」





人混みの雑踏に紛れて、どんどん強くなる雨の音が聞こえてくる。

夜は確実に更けていく。

待つってどれくらい待つんだろう。

寒くない?お腹すかない?しんどくない?

あたしが居たら変わることは何かない?





「そんなに頼りなく見えたのか?俺は……。」

「違うよ、手塚なんにも言わないから……」





あたしみたいにおなか減ったら怒って寂しい時は悲しくなってって。

わかりやすくないから。

大丈夫かな、じゃあやっぱり一緒にいればよかったって思うから。

どうせ家に帰ったって思ってしまうから。

手の甲が、一瞬当たって。





「言わない分あたしがわかりやすく心配してるんだよ……」





すっと、つないだ。

思ったよりずっと冷たかった。

自分の手も、手塚の手も。

握りしめてたはずなのに全然あったかくなかった。





「やっぱりコーヒーでも飲もう。」

「……」

「……わかった、ポテトもつける。」

「言ってないよ」

「世田谷はわかりやすいから、俺は、助かっている。」





これであたしまでわかり難かったら

あたしたちはどんな関係で居たんだろうね?

それは、まぁいいや。

解りやすくいることが、君を読み解く鍵になるなら。





「ポテトじゃなくてメンチカツが良いなぁ、手塚」

「……本当わかりやすいな、世田谷は。」





言ってくれないとわからないから。

あたしはずっと、君のそばに居る。




Miss Understand
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
171022


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