真冬の帰り道
今季最強の寒波って年に何回来るんだろうね?
先週あたりからこっち、ずっと、
『来週の週末は50年に一度の寒波が襲来します』
『不要不急の外出はお控えください』
『北日本だけではなく東日本・西日本でも大荒れの予想です』
『交通機関の乱れや体調管理にご注意ください』
って脅されっぱなしなんだけど。
ぴろーん
「間もなく雨が降り出します?……晴れてるよな?」
「月がめっちゃきれーい」
「寒波寒波と散々行っていた割に、雪も降らなかったな。」
ひとしきり空を仰ぐと、手塚は歩き出す。
雪、という言葉に過度の期待感を抱いていたあたしも後ろに続く。
風だけは異常に強くて、予想気温よりもはるかに寒くは感じていた。
暗くなった夜道を月明かりが導いてくれる。
「バスも電車も全然止まんなかったね……」
「バスも電車も止まったら、皆こんなに悠長に歩いてはいないだろうな。」
行き交う人の顔にも、焦ったような表情はない。
少し背をかがめて寒そうに足早に過ぎ去っていく。
「もし帰れなくなったら……、」
「手塚なら走って帰れるけどさー」
「世田谷の家に泊まらせてもらう。」
「えっ」
「世田谷は体温高いから、寒い夜には丁度いいだろうしな。」
いつもの金曜日。
いつもよりちょっとだけ寒い夜。
「……冗談だ。固まるな、寒いだろう?」
今季最大の寒波って年に何回やってくるんだろう?
冬が終わって
春が来るまで
ぴろーん
「……お、間もなく雪が降り出します、だって。」
あと、何回やってくる?
「……そうそう雪なんか積もんないよ。あたし知ってるもん」
「そうだな。本当に止まるほど積もったら大騒ぎだからな。」
「……だから雪積もんなくたって泊まりに来たらいいよ」
「……、」
「いつでも来ればいいよ。ただし添い寝はお断りだけどね!!」
「……そうだな。」
「今はね……?」
「……今はな。」
寒さが自然と、ふたりの距離を近づけていた。
家までもう少し。
駅までもう少し。
手塚が日本を離れるまで、もう少し。
間もなく春がやってきます。
今後の言動と行動に、ご注意ください。
真冬の帰り道
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
170115
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