Love in action


住宅街の合間を縫うように、電車は走る。





「大丈夫か世田谷?」

「だいじょうぶ、でもなんかあったら助けて」





満員の人並みの中に世田谷の小さい体が埋まる。

はぐれないようになるべく距離を詰める。

咳ひとつするのでも気を遣いそうなほど車内は混んでいる。

がくんと足元が揺れて、どうにか走り始める。





「毎日こんななの手塚……」

「朝は早いから空いてるけど、帰りはいつもこんなものだな。」

「まじすか……」

「家が近くて良かったな世田谷は。」

「ほんとだよ」





スーツや制服に挟まれていつもよりずっとげんなりしているように見えた。

そうだな、世田谷はだから自転車が似合うのかな。

あの学校の前の坂道を、颯爽と走り抜ける様が俺は好きだ―――





「急停車します、ご注意ください」





体が大きく前に振られた。

視界の端で世田谷が後ろへ飛んでいきそうになるのが見えた。

慌てて手を伸ばして自分の方へ引き寄せる。

ばすっと胸元に衝撃が走り、電車はアナウンス通りつんのめるように停車する。

一瞬の静寂の後、乗客から安堵の溜息が漏れる。

学ランのボタンに絡みついた世田谷の髪が、衝撃の大きさを静かに物語っていた。





「……あり、がと」

「大丈夫か?」

「危ない、ひっくり返るかと思った。……なんかあったのかな」

「だな。」

「……あの、手塚、……うで」





至近距離で世田谷が狼狽えている。

他の乗客は手持無沙汰にケータイなど弄り始めている。

どうせこの区間は走行距離が短くて頻繁に停まるんだ。





「着くまでこのまま。」

「えっ」

「ぼけっと立ってたら本当に吹っ飛ばされかねないからな。」

「いちおうしっかり踏ん張ってたんだけど……!?」

「どこでもいいからしっかり掴んでろよ。」

「……」





我ながら苦しい理由だと思う。

でもこれで世田谷が吹っ飛んでいかないなら。

離れていかないなら。





「これきれいなおねえさんとこんなふうになっちゃったりしたこと絶対あるでしょ手塚」

「ないよ。」

「あるよ」

「ないって。」

「あるって絶対」

「……本当にないよ?」

「……じゃあそういうことにしとく」





がたんと

今度は静かに走り始めた。

俺の家の最寄り駅まであと4駅。

少し妬いてる彼女を腕に抱いたまま、あと4駅。

Love in action
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
180114


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