熱いシャワー浴びて
思い切りシャワーの栓を捻ると、痛いくらいの湯が全身に打ち付けた。
大事にしていた写真をびりびりに千切られた様な。
そんな気持ちが胸の中で渦巻いていた。
「なによ、そんなに嫌がることないじゃない。減る物でもないのに」
「……減るよ。」
「キスしたくらいで何が減るって言うのよ」
……あのな。
あのな、そういう問題じゃないんだ。
ウチの世田谷はそんなに許してくれる性格じゃないんだ。
まして今俺はドイツであいつは日本だ。家に帰ったらすぐいるってわけじゃないんだ。
今日なんか訳わからんがキスされたんだけど嫌だったからお前ちょっと上書きして、くらいじゃないんだ。
すぐに出来ないんだこっちは!!!
「……やだな。」
水音しか聴こえない密室の中で一生懸命唇を拭った。
感触なんか忘れてしまうけど、一緒に世田谷の分まで忘れてしまう。
温度なんか覚えてもないけど世田谷の体温が欲しい。
世田谷のがいい。
「おいクニミツ?大丈夫か?逆上せて倒れてないだろうな?」
「Mir geht es gut...」
気のすむまでシャワーに当たって流したら、少しだけ落ち着いた。
正直学生時代だって似たようなことはあった。最悪世田谷に見られたこともある。
……すぐに会えないということは本当につらいな。
今回の事も出来れば顔を見て話したい。電話やメールでは彼女の表情が見えないから。
徒に世田谷を不安にさせたくない……―――
「本当にアナタの彼女はアナタのことを愛してるの?」
「それはあなたには関係ない。」
「関係あるわよ、だって一度もアナタに会いに来ないじゃない」
「それはまだ、彼女も高校生で……、」
「アタシならそんなの関係ないわ、世界の果てでもアナタに着いていく、クニミツ」
ソファの淵でうつらうつらしながら考えていた。
世田谷が居ないのは寂しいけれど、世田谷に俺を追いかけて来てほしいとは思っていない。
いつか俺が、ちゃんとテニス出来る様になったら。
俺がここへ君を、連れて来るから。必ず。
まだぬくい指先ですっと唇をなぞった。
心の中で千切られた写真をひとつひとつ直していく。
あの温もりを再び得るまではまだ、遠い。
熱いシャワー浴びて
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
180121
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