スイートドライブ
我慢してる。
超我慢してる。
「……―――」
がくんっ
「―――っ!?」
前にのめった後、反動で思い切りシートに背を打ち付けた。
あ……いかんいかん……
「……ふっ」
右隣で、手塚が。
我慢しきれないように、吹き出した。
「眠いんだろう?寝てていいよ世田谷。」
「……だいじょうぶ、起きてる……」
「心配しなくてもちゃんと送るから。」
「起きてる」
運転してもらってるクセに助手席で寝コケるのはどうよ!?
そんな思いを抱いて早や数年
心地よい温度
心地よい雑音
心地よい振動
「……っ」
「目が半分閉まってるぞ。」
「……だいじょぶ」
「今日は相当はしゃいでたもんな。」
「ひさしぶりだったから……」
君に会うのが。
「少し混み始めたし、まだまだ時間かかりそうだぞ?」
「あーじゃああの、……歌う。歌ってるーずっと〜……!」
手塚はもう、笑うのを隠さなかった。
必至で欠伸を噛み殺すあたしをチラ見する。
いつもぶっ飛ばし気味の君の運転も随分と穏やかになっている。
もっとも渋滞の後ろに着いたせいで走りたくても走れない状況なんだけど。
……ずっと、
「……なかなかだな、これは……。」
家につかなければいいのに……。
長く伸びたヘッドライトの列が、金色の鎖のように二重三重に連なって。
1分でも1秒でも、長く……長く……。
かくんとなっては目が覚め、しばらくするとまた意識が遠ざかる。
ここは眠い……この状況は……眠い……。
「腹減らないか。大丈夫か?世田谷。」
「うん」
「まだ眠たい?」
「ううん、大丈夫」
「随分大人しいから。」
「……もうちょっとそのまま」
「ん?」
ほっぺたをいじってた左手が、離れた。
「そのまんま」
「……やわらかい。」
「うん……」
「世田谷気持ちいい。」
「うん……―――」
瞼の裏に幾つもの光の残像が焼き付いていた。
君の気持ちいいがあたしに伝染して、エンジンの止まった車内が静かで。
「お疲れ。おやすみ。」
静かに車が流れはじめたことに気付かないほど寝入ってしまった。
右の、隣りがあったかくて、そのまま眠ってしまった。
勿体ない程の贅沢な時間。
助手席に座ると眠くなる君の気持ちが、よーくわかってしまった。
出来たらこのまま家まで。
出来るならそのまま、朝まで。
スイートドライブ
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
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