女神のキス


例えるなら天にも昇るような気持ち

この世の誰にも負けないような気分





「……世田谷はくれないのか。」

「何を……?」

「言わせる……?」






平然とした顔で言ったけど内心泣き出しそうな気分だった。

だってきっと君は全部見てたから。

どんな思いでそんな端っこに独りで立っていたのだろう。




「ご褒美のキス……。」






狼狽えたような瞳をして、さっと顔を赤らめた。

どんな金髪美女も、どんな黒髪美人も敵わない。

都合と勝手と下心とトラブルと事故の洪水のようなものだから。






「……さっきまでいろんな人に散々もらってたじゃん、ごほうび……」






どんなに神様に願っても、一番欲しいものは手に入らない。

だから思い切って口に出して本人に行ってみようと思ったんだ。

じゃないといつまでたっても願いは叶わないから。





「今更あたしのは良いでしょ。要らないでしょ?」

「世田谷が全部吹き飛ばせばいい。」





ご褒美とは、本人が喜ばなければ何の価値もないものであって。

俺はキスというご褒美の価値を世田谷との間でのみ見出せるのであって。

ああ、まどろっこしい。





「―――世田谷のキスで、全部消してくれ。」





そう言ってすっと目の前に跪いた。

壁際の照明が丁度彼女に当たって、光が射す。

ああほら、そうだ、思った通りだ。

肩に置かれた手の重みを合図にゆっくりと目を閉じた。

自分の周囲の空気が彼女の甘い匂いに染まる。






「手塚はそれが一番うれしいの……?」






囁き声で聴かれた質問に、口角を上げて答える。

その場にいた誰もが息を飲む。

さっき俺に触れたものを、想いを、事情を、全部。

君の唇が帳消しにしてしまう。





「……女神のキス、……。」

「なに?」

「ああ世田谷、もっとだ。」

「え、ええっ?もういいよ……!?」

「まだまだ全然足りない。もっと。」





例えるなら天にも昇る気持ち

この世の誰にも負けない気分

女神のキス

君のキスひとつで僕の世界はこんなにも輝く。

俺の一番欲しいものは、いつでも君が持っている。

俺を満足させるものはいつでも、君しか持っていない。




女神のキス
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
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