きみといきてゆく


手塚の手がいつもよりずっとあったかいと思って、初めて、

あたし相当恐かったんだ、と気が付いた。

一回り大きな掌が手の甲を撫でる。





「なにか連絡はあったのか?」

「ううん。電話も今の所は大丈夫そう」

「追われた気がしたのはどこ等辺りからだ?」

「駅……出て、すぐかな。違う道通って店には入ったけど」

「世田谷、……すまない。」





手塚の顔は。

俯いてて、全く見えない。





「……あたしのほうこそごめん。なんか記事になったら……」





デビュー戦を華々しく飾り、日本に帰国したばかり。

同期や後輩は『帝王』『王子』として世界を股にかけるテニス界のスターだ。

そんな時にこんなちっちゃなスキャンダルで……





「俺は世田谷にそんな顔をさせてばかりだ。俺のせいで。」

「……てづか」

「世田谷を苦しめてばかり……。」





苦しんでるんだろうか?あたしが?

いいや、苦しんでるのは手塚の方じゃないの?

いつも何かとテニスに挟まれて苦い顔しているのは君じゃないの?

ぎゅっと握りしめられた手が、痛い。

君の感情の度合いを物語っている。





「……じゃあおよめさんにして」

「……―――!!?」

「テニスでアホみたいに強くなったら、手塚が納得できるまで強くなったら……」





冷えていた指先に熱が戻る。

力任せに握られていた手を、逆に包み込んだ。

アホみたいな約束。





「あたしのこと、幸せに出来るのも手塚だけだよ」





何度も何度も迷う。

苦しさや無念さだけで継続する物事はつら過ぎるだろう。

もし君の未来に喜びを灯せることができるのなら。

それがあたしに出来る役割なのだとしたら。





「……わかった。」

「返事は手塚が納得した時で良いから」

「今すぐしたいくらいだ。」

「ふふっ」

「……、世田谷。」

「ん?」

「その顔……。」





そんな光栄なこと、あたしはないよ。

何事にも打ち勝つ力になる。


きみといきてゆく
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
180520


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