浮かぶ空は何色か
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死と隣り合わせの鍛錬も毎日を積み重ね――気付けば私が山に来てもう1年が経つ。
「型…ですか?」
「そうだ」
そんなある日。
積もった雪の中で保存していた芋を取り出していた私に、師匠は新しい鍛錬を始めると告げた。
今まで行っていたのは肺を鍛える基礎中の基礎。
これからは特別な呼吸法を用いた剣術を教えてくれるという。
「型は全部で八つ。その全てをお前に叩き込む」
それからは地獄の鍛錬の再来である。
基本の鍛錬は変わらず続け、その半分の時間で新しい呼吸法を用いて刀を振るう。
慣れない呼吸に肺は簡単に悲鳴をあげる。肉体的疲労も今までの倍以上だ。
けれどそれも師匠曰く「呼吸が出来ていないのだ馬鹿タレ!」と、また喝を叩き込まれる。まさに弱り目に祟り目とはこのことだ。
「ヒュゥゥゥウゥウゥ――」
数も負荷量も増えた鍛錬をがむしゃらに続けた。何が正しいかなんて自分には分からないから。
ただ己は導き手である師匠を信じて進む。生きる力は、確実についてきている。
「今の呼吸は全集中の呼吸という」
型もある程度身に付いたところで師匠はその呼吸の名前を教えてくれた。
全集中の呼吸は肺を大きく使い、酸素を身体の隅々まで送ることで筋肉量や瞬発力を著しく引き上げるという。
それによって常人では成し得ない動きが出来るようになり、怪我による出血や毒の回りも止めたり遅らせたりすることも可能になるらしい。
なんという万能呼吸と驚く私に、師匠は続けて課した。
「全集中の呼吸を自分のものにしろ」
「自分のもの…」
「起きている時は勿論のこと、寝ている時も全集中を続けるのだ」
「(いや、寝てる時もって無理では)」
「返事は?」
「……はい!」
1年ものあいだ無駄に肺を鍛えたわけじゃない。
全集中の呼吸もコツさえ掴めばなんら問題なく、それこそ息を吸うように身に付ける事が出来た。
でも意識して出来るようになった呼吸法を無意識でも行えるようになるにはやはり難しく、寝ている間に普通の呼吸に戻ってしまう事もしばしばあった。
まぁその都度、腹を叩かれて起こされるのだが。まったくもって揺るぎない鬼師匠である。
「遅い!もっと早く振るわんか!」
「っ…はい!」
そして日常生活に全集中の呼吸が溶け込んだころから師匠相手の対人訓練が始まった。
師匠は木刀。私は真剣。なのに師匠に一太刀浴びせたことは1度もない。
「遅い!!」
「あガッ!?」
むしろ木刀に吹っ飛ばされる回数の方が断然多い。
吹っ飛ばされる回数と同様に骨を折る回数もどんどん増えていった。
前は肋骨、その前は顎、その前の前も確か肋骨だったか。痛みも何度か味わうと慣れるものだと初めて知った。
力は弱いが痛みには強くなった。これも1つの成長。悲しくなんかない。
「へぶッ!」
「油断するな馬鹿タレ!」
嗚呼…今日も今日とて空が青い。
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