二通

昨日、無駄に眠れなかったせいで遅くまで起きてしまったのが敗因だ。それが今に祟り、起床時間がいつもより三時間遅れた。まあ、今日は休みなんだから別にいいけど。

父さんと母さんは既に仕事に出かけているのだろうか。エンデヴァーさんが建ててくれた家は、部屋数も廊下の長さも一般家庭のそれとは違うから、人探しも大変だ。

「まあ、昔は家でかくれんぼとかしたけど」

焦凍と会えなくなった辛さで沈んでいた私を、父さんや母さんは必死に励ましてくれたのだろう。家族三人でするかくれんぼは、三人とも家の構造をよく理解していなかったからか、案外楽しかったよなぁ。

なんてとりとめもないことを思いながら階段を降り、そのまま台所――ではなく玄関を出た。時刻は十時半……であれば、そろそろ郵便配達されているはず……

「あ。勝己」

丁度勝己も玄関から出てきてポストを確認しているところだった。遠目で見ていると、彼は何やら封筒を取り出して足早に家へと戻っていったので――おそらく、通知が来ている。

「……」

ゆっくりと、ポストの方へと歩き出す。さすがに心臓がどきどきするし、手もちょっと震えていた。

……おそらく実技のポイントは、ルール通りでは0点。私は敵を一体も戦闘不能に出来ていない……、受かっているか、それとも私の予想が外れて落ちているか。いずれにせよ、賽はとっくの昔に投げられている――!

「ええいっ……!」

かぱ。という間抜けな音と共に、ポストの蓋が開いた。するとそこには、雄英高等学校と文字が書かれた封筒が一枚。まだ震えの止まらない右手でそれを掴むと、何やら下にもう一枚、紙が。

「……あれ、また封筒……」

差出人不明。ドシンプルな、集金とかに使われる茶色い封筒だった。それも一緒にとって、もはやドキドキというよりバクバクに変わった心臓の音を聞きつつ、自分の部屋に駆けこんだのだった。