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「ええ!?こんなに若いのに軍人なの?!」



大声で驚きを露わにしたのはウィンリィ・ロックベル。エルリック兄弟の幼なじみだ。とても腕のいい機械鎧技師の彼女は徹夜に徹夜を重ねてエドワードの腕と足を作ったという。そのおかげでエドワードの手足はすっかり元通りであるし、アルフォンスもエドワードに錬成してもらって数日前のように歩き回れている。ウィンリィやピナコさんの手は明日への希望を創り出すと言っても過言ではない。実際、エルリック兄弟は大部分で救われているはずだ。

ウィンリィは同年代の女の子なんて久々!と嬉々として私を家に招き入れてくれた。夜は一緒に寝ようね!まるで昔からの友人のように接してくる彼女に戸惑ってしまった。勢いに押されて小さく肯くと彼女は花の咲くような笑顔で私の手を握る。それがとても眩しくて目を細めた。

アルフォンスはウィンリィよかったねと声を掛け、エドワードは頬杖をついて終始無言だった。アームストロング少佐はにこにこと笑ってこちらを見ている。ああ、絶対マースさんに報告されるんだろうな、この光景。私が同年代の女の子と喋っているのは本当に珍しいことだから。



「それにしてもエドも隅に置けないわよねー。こんな美人な女の子!」

「そんなんじゃねえよ。」

「またまたー!」



バシバシと肩を叩くウィンリィに、エドワードは眉を寄せてもう一度否定した。ピナコさんはそれを見て煙管を吸いながらカラカラと笑う。ウィンリィは東部の内乱で両親を亡くしたのだとピナコさんが言っていた。それでも今笑っていられるのは彼女達の強さなんだろう。内に秘められた気持ちは私にはわからないけれど。

昔馴染み特有の和やかな雰囲気に私はなんだか居たたまれなくなった。アットホームと言うのか、無償の信頼関係のようなそれ。長く会わなくても一本の筋で繋がっている強固なその絆。羨ましいような空恐ろしいような。近くにいるのが耐えられなくて食卓から一番遠いソファーへ移動した。膝を抱える私に気付いたアームストロング少佐が私の隣に座る。少佐は至極優しい声音で話し掛けてきた。



「いいのか?」

「…ああいう雰囲気苦手なんです。」

「子供は子供らしくすればいい。」

「アームストロング少佐、私はもう子供じゃありませんよ。」

「はっは!我輩から見たら十分まだ子供であるぞマスタング准尉!」



豪快に笑うアームストロング少佐。彼はとても優しい。彼だけではない。マスタング大佐もマースさんもリザさんも、他の人も。とても優しい。そしてお節介焼きだ。私がせっかく決心しても頑なな心を解こうとしてくる。「私は普通の子供には戻れません。」小さく言うと少佐は眉を下げて少し悲しそうに笑った。



「マスタング准尉の置かれている状況は我輩も理解しているつもりだ。」

「そうですか。それなら放っておいて頂けると助かります。」

「…むう、頑なだな。」



青い軍服と、ホルスターのピストルは私の決意の証だ。それはこれからも変わらないし、軍服を脱ぐときは死ぬときだと、そう思っている。大佐の背中を守るのがリザさんならば、私は彼の前から降りかかる銃弾をこの身に受けよう。でもきっと大佐はそんな犠牲を嫌がるだろうから、いざという時に彼が止める隙もないよう一番に飛び出せるように。迷ってしまわないように、常に覚悟していよう、と。



「…マスタング准尉。ヒューズ中佐が言っておったよ。最近の子供達は成長が早過ぎて大人が手を貸す隙もない。それは大人からしたら寂しいものだな、と。」



私の頭に手を乗せながらエドワード達を見て言ったその言葉。暗に、その子供達にはお前も含まれているのだぞ、と言われているようだった。「子供じゃないです。」駄々をこねるようにもう一度だけ言うと、少佐はもう何も言わなかった。

大人に守られるべき子供は彼らだけで十分だ。食卓で笑い合う3人をチラリと見て、私はリビングを出る。外の空気を吸ってきますと言ったが、ただここにいたくなかっただけだ。

迷わないと決めたはずの私はこんなにも些細な事で揺らいでしまう。エドワード達のような輝きを目の当たりにしたら、本能的に無意識的に私はそれを求めてしまうから。

ああ、こんな自分、イライラする。