なんなんだ!なんなんだあの女は!
俺は憤慨していた。あの女が足早に退室した後、あまりの怒りに大佐達への挨拶もそこそこに弟のアルフォンスの元へ足音強く戻ってきていた。アルは猫と戯れながら「兄さんどうしたの?」なんて聞いてくるものだから、先ほどの失礼な女のことを怒り露に説明してやった。
握手を求めたらいきなり手を払われたこと、自分から払ったくせに怯えていたこと、練成陣なしで練成が出来ること、どうやら生体練成について研究していること。
生体練成については興味があるのは本音だが、あんな奴に頼るくらいなら自分で調べてやる!あんな奴の力なんか借りん!
アルがまあまあと宥めてくるが、俺のこの怒りは俺にしかわからないんだ!アルだってあの場にいたらきっと怒っているはずだ!と俺は鼻息荒く言い切る。
「あんな奴に育てた親の顔が見てみたいわ!」
「軍の敷地内で叫ぶのはやめたまえ。」
「あ、マスタング大佐、こんにちは。」
「それより鋼の。生体練成に詳しい錬金術師の紹介が欲しかったんではなかったのか?」
「あ。」
「もう!兄さんてば!」
「肝心な事忘れないでよ。」と呆れたように図星をつく弟。弟に怒られるなんて情けない。いや、そんな大事なことを忘れるくらい俺は怒りに満ち満ちていたのだ!そこのところを理解してくれ弟よ!
ふふんと馬鹿にするような笑みを携えた俺を見下ろす大佐にまたいらいらしながらも、彼の差し出している書類を手に取る。一枚渡されたのは国家錬金術師のデータ。
すっかり忘れていた。あの胸糞悪い女のせいで。いらいらと腹の立つ感覚をまた覚えて、胸がもやもやする。恨みをかった覚えはいくらでもあるが、初対面からあんな態度を取られる謂れはない。ないはずだ!
書類を見るとあいつではない全く別の人物のデータが載っていてほっとした。
名前はショウ・タッカー。綴命の錬金術師。人語を理解する合成獣を練成して国家資格を取った男だ。これは期待できると、アルと笑い合った。これできっと一歩前進する。俺達が元の体に戻るための一歩に繋がるはずだ、と。
「ショウ・タッカーには話を付けよう。これで借りはチャラでいいだろう。」
「ああ、サンキュー大佐。」
にっと笑うと、目線のずっと先にさっきのあの女が見えた。大佐を呼びに来たんだろう。大佐はあいつに気が付くと手を上げて「今行く」とジェスチャーをしたようだった。「ではまた後で」、の言葉を残して大佐はあいつの元へ走っていった。
大佐があいつに耳打ちで何か言うと、こちらに一瞬だけ視線を飛ばしてきた。アルが「兄さんあの人?」と聞いてきたので頷くことでそれに答える。視線をもう一度こちらにやってきたあいつは小さく会釈して大佐を引っ張って去っていった。アルも隣で小さく会釈し返していて、何だか無性に腹が立った。
たかだか会釈ぐらいでチャラになるわけあるか。しかしアルの中では違う印象を持ったらしく、「いい人そうじゃないか、綺麗な人だね。」と逆に俺が咎められる勢いだった。
腑に落ちない。誰か俺の気持ちをわかってくれる奴はいないか。