もしも「また」があるなら



全身に軽い筋肉痛を感じながら、私は目を覚ました。
時計を見ると六時を少し過ぎたところで、普段よりやや早起きしたくらいだ。
昨日は新堂さんのアドバイス通りに帰宅後シャワーを浴び、ゆっくり時間をかけてストレッチをした。
もしこれを怠っていたらもっと痛みがあったのだろうか…と思い、新堂さんに心の中でお礼を言った。



せっかく顔見知りになったのだから、学校で会ったら挨拶をしよう。
そう思いながら、通学路をやや早足で歩いていく。
期待に胸を膨らませているのだろうか?
しかし我が校の生徒数を考えると、校内で会える確率はかなり低いといっていい。
昼休みだって昨日と同じ場所にいるとは限らないし、学年が違うから教室のある階も違う。

(まあ、もし会ったら、程度だよね)

やはり自分の教室に入るまでに会うことはなく、既に登校していた友人にあいさつしながら、その輪に加わった。



授業中。
背中を伸ばし大きく息を吸って、吐く。
英語の小テストの答えを埋めきった私は、空いた時間でゆっくりと体の状態を確認していた。
太ももからおしりにかけて、そして背中に少し痛みを覚える。
昨日走っていた時の景色、全身の感覚、そして新堂さんの背中。
目を閉じると、昨日と同じ光景が鮮明に映し出される。
同じ教室の友達や委員会以外での出来事は、私にとってすごく刺激的だった。
本当だったら、知り合うこともなく卒業していたかもしれない人。
せっかく顔見知りになれたのだから、もっと……

(……もっと?)

私は何を期待しているのだろう。
小さくても自分の存在が認められたコミュニティがあれば、それでいいと思っていた。
直接関わりのない先輩後輩、ほかのクラスの人と、たくさん知り合いになりたいなんて望んでいない。
何人かの仲のいい友人がいれば、それで。
そんな私の高校生活が、ここに来て変わり始めていた。



もしも「また」があるなら



新堂さんと会って、言葉を交わすことが出来たら。
それが当たり前になったら。
私の世界は、どんなに大きく変わっていくだろう、なんて。



EHL.