生まれた劣情に蓋をする日々



その夜、私は泣き続けた。
心はお腹より下まで沈んでいくような錯覚にとらわれる。
どうして、どうして。
また同じ疑問が頭を埋め尽くす。
しかし今度は、その一言一言が体を突き刺していくような、鋭い痛みを伴っている。

翌朝、落ち着いたのは涙だけだった。



嫉妬、と一般的には表現されるのだろうか。
こんな状態でまともに授業を受けられるわけがなく、板書をそのままノートに写すだけに終始した。
頭に浮かぶのは昨日の放課後の出来事と、今の自分の感情。
昨日いた女の人への妬みとか悔しさとか、そういった気持ちはない。
じゃあ嫉妬ではないのかな…。
そういった自分の感情が何物なのかわからず、きちんと整理しなければと思うのに、考えることを拒む自分もいる。
特に風間さんの顔を思い浮かべようとすると、抑えているものが爆発してしまいそうだった。

風間さんに会いたかったはずなのに、彼のことを思うと苦しくて仕方がない。



友達との会話もそこそこに、今日はまっすぐ家に向かった。
幸い駅とは方向が逆だから間違っても遭遇することはないだろう。
昨日駆け抜けた道をゆっくり踏みしめていると、我慢していた箍が崩れていくような気がした。

結局帰宅してから、また泣いた。
声を押し殺し、タオルを目に押し付け、壁に体を預けていつまでも泣き続けた。
頭が回らず、感情的な思いだけが浮かんでくる。

ちゃんと風間さんと会って話がしたかった。
何を言われても怒らないようにしようと心に決めていた。
あの日のことを謝りたかった。
からかうように話をしてほしかった。
また名前を呼んでもらいたかった。

そうして、拒んでいたあの放課後の、一瞬目が合った時の風間さんの表情を思い出した。



生まれた劣情に蓋をする日々



あんな目で、顔で、見つめないでほしかった。
追いかけてきてほしかった。
あの人じゃなくて、私と過ごしてほしかった。

そんな醜い感情を胸の奥深くに押し込み、静かに深呼吸をした。



EHL.