哀の切創



翌日の朝、友達に会うなり心配されてしまった。
それはそうだろう。
泣き明かした私の目はすっかり腫れ、若干隈もできていた。
泣ける映画を見ていたと嘘を吐くと訝しげな表情をしていたけど、追及はしないでくれた。

授業は以前より聞くことはできたけど、ぽっかりと大きな穴が開いたような空虚さがあった。

お昼休み、私は友達と校舎の外に出てきていた。
落ち着いた場所がいいねと、例の中庭のベンチに並んで腰を下ろした。
友達は私がここを好きなことを知っているから、きっと気を遣ってくれたのだろう。
食欲はなかったけど何も食べないのも良くないと、おにぎりを少し作ってきていた。
水の流れる穏やかな音と、校庭の喧騒を遠くに聞きながら、穏やかな時間を過ごした。

午後は友達のおかげで、普段に近い状態にまで戻ってきていた。
無意識の強がりなのかもしれないけど、それでも少し気が安らいだ。

部活に行く友達と別れ、校舎を後にする。
賑やかさの残る廊下、階段を歩き進め、下駄箱までたどり着く。
上履きを仕舞いローファーを出したところで、その二人の存在に気が付いた。

(………!)

ちょうど靴を履き替え出ていったところらしい。
つま先をトントンと地面に打ちながら、微笑む男子生徒に駆け寄る。
そんな女子生徒の笑顔はとても輝いていて、直視できない私は顔ごと逸らして、それ以上見ないようにした。

(……風間さん)

そして、あの時見かけた女の人。
あの雰囲気から、同学年なのだろうか。
ローファーを履き外を見やると、二人はちょうど校門を出ていくところだった。
女の人は相手の腕に手を絡ませるようにしている。
その光景から、二人がとても親しいのだと知る。



虚勢で覆っていた私の心は大きな音を立てて、一瞬で壊れていったような気がした。
それか、鋭利な刃物で深い深い傷をつけられたような。

その光景を振り切り、走って帰宅する余裕もなかった。



哀の切創



EHL.