おめでとうの言葉だけ



放課後、私は委員会の集まりで保健室に来ていた。
最近体調不良で保健室を利用する生徒が増えているらしく、それに関する連絡だった。
確かにこの前、私のクラスの女の子も授業途中で保健室へ休みに行ってたっけ。
先生が不在時の保健室の使い方や、体調不良者の対応方法について軽く説明を受けて、集まりは解散となった。
同じクラスの荒井くんと、どちらともなく一緒に保健室を出る。

「そういえば先生の言う通り、最近保健室に来る人多いよね」
「風邪が流行る時期でもないのに、不思議ですね」
「ね、何か悪い気でも集まってるのかな」
「その可能性は十分考えられます」
「……え?」

軽口を叩いたつもりが、荒井くんは真に受けた返答をしてきた。
荒井くんの顔は感情が読み取れなかったけれど、ふざけた様子は一切見られなかった。

「霊の類が、僕たち生徒に何か悪さをしているのかもしれません」
「……あ、荒井くん?」
「体調不良で苦しむ生徒たちを、保健室の隅で笑って眺めているかもしれませんね」
「ち、ちょっと荒井くん!」
「…こんな話は、嫌いでしたか?」

ぴたりと歩みを止めた荒井くんが、私を見つめる。
嫌いでしたらすみません、と、表情を変えずに淡々と言った。
そして僅かに口元を緩ませ、思い出したように言葉を紡いだ。

「…そういえば倉田さん、今日誕生日でしたよね?おめでとうございます」
「……それ今言う?」

ふふ、と笑いながら再び歩き出す荒井くん。
…今のはきっと、荒井くん流の冗談なんだ。
荒井くんらしいといえばらしいのかな。
嬉しいような、ちょっとがっかりするような、複雑な気持ちだった。



EHL.