それは、私たち三人の関係が始まった合図だった。
二年生になった私が、三年生の教室がある一階に当然のようにいるのは、決してそこが一階だからではない。
私が常に行動を共にする彼が、三年生だからだ。
「誠、今日一緒に帰れる?」
「ああ、大丈夫だ」
「ちょっと職員室に行かなきゃだから、校門で待ち合わせしよ?」
「おう、あんまり待たせるなよ」
彼の名は、新堂誠という。
私と彼は、物心がつく前から兄妹のように育ってきた。
今更一緒にいないなんて考えられないくらいで、それはお互いが高校生になっても変わらなかった。
彼が先に一つ上の学校に入学したときは、できるだけ一緒に登下校をしていたくらいだ。
今日も一緒に帰る約束をし、私は職員室に向かった。
手短に用事を済ませ、小走りで下駄箱へ向かう。
彼の言葉の通り、あまり待たせてしまうと、痺れを切らして先に帰ってしまうのだ。
今日はそこまで時間はかかっていないけれど、何となく急がなければと思った。
ばたばたと上履きを脱ぎ、ローファーを出して履く。
そして校門へ向かおうと顔を上げた時。
「……?」
ぱちっと、外にいる人物と目が合った。
見たことのない男の人。
見た目から後輩ではないだろうけど、同級生か先輩かわからない。
その表情から感情は読み取れず、ただ真顔で私の方を見ていた。
一瞬ほかのものを見ているのではと思ったけれど、その視線は確実に私を捉えている。
「……!」
そんな彼がいきなり微笑むものだから、必要以上に驚いてしまった。
柔らかく笑うその姿に、誠とは全く違う人柄を感じた。
(…あ、そうだ、誠が待ってる)
はっと我に返り、校門へ向かおうと足を動かす。
彼の前を通る時、軽くお辞儀をして。
誰かを待っているのだろうか、彼はそこから立ち去ることなく、私を見送ることもせず、留まり続けていた。
「おまたせ」
「思ったより早かったな」
「そう?」
誠と合流し、帰路に着く。
今の話をしようか悩んだけれど、上手く説明できない気がしたので止めておくことにした。
今日あった出来事を互いに教え合いながら、今日も二人、並んで歩いた。
それが三人になるのは、そう遠くない将来の話。
もちろんこの時の私には、知る由もない。
title by 確かに恋だった 147