They "reunion"



仲間たちと合流して洞窟を抜けると、巨大なクレーターにライフストリームが集まっていた。はるか昔、この星に落ちた隕石が作った巨大な傷。それを癒すために星がエネルギーを集めている場所。そこにはライフストリームが竜巻のごとく吹き荒れている。


「…此処が…旅の、終着地…」


思わずそう呟いた。
誰がみても分かるくらいに、そこには巨大なエネルギーが溢れていた。


「セフィロスと決着をつける時がきたのね。私もセフィロスのせいで いろいろ無くしたわ……」


ティファが言う。
——いろいろ、無くした。わたしも、彼女も、そしてここに立つ皆も。ティファはさらに気丈に前を向いて、言った。


「いきましょう!」


ごつごつとした岩場には雑草ひとつ生えず、ただ中心へ向かって強い風が吹き荒れている。周辺のすべてを中心へと集めるように吹き荒ぶその風に背中を押されるように皆で歩き続けた。立ち上っていた緑色の光へ、近づいてゆく。


「…ライフストリームの竜巻…」


近づくほどにはっきりとわかる、その力強い流れに、一行は立ち止まった。


「…待って」


来るものすべてを拒むような風を受けて、近くに蹲っていた黒マントが消滅した。壁のようなライフとリームの流れに慎重に近づき、そっと手を伸ばす。


(——エアリスも、この流れのどこかに?)


そうだったらいい。あなたの存在が感じられたら。
指の先から流れてくるのは、暖かな何か。ずっと聞こえなかった星の声がここにきて再び頭に響いた。力を込めると、指の触れたところから少しずつ穴が広がってゆく。それはやがて、一人分の小さな穴になった。


「ユリア、ありがとう」


ティファにそう言われて、頷いた。皆が通り抜けるのを見送って、自分もその先へと歩みを進める。さらに歩き続けると、岩場の先にたくさんの黒マントたちが集まっているのが見える。それに対して響く星の声は今までの怯えよりはむしろ、怒りに近い。


「っセフィロス!?」


再び、あの黒マントたちが放つのとは比べものにならないくらいに強い、嫌な予感が体を駆け巡る。『あの時』と同じように空に突然現れて降ってきたセフィロスは、けれどわたしたちではなく黒マントの倒れていたところへと降ってきた。その巨大な刀をひと振りすると、それだけで数人の黒マントが消滅する。


クラウドがそれを見て、駆け出した。


「セフィローーース!!ここまでだ!」


クラウドが叫ぶのに、セフィロスはあくまで冷静に笑っている。


「そう、ここまでだ。この身体の役目はな」


そう言葉を発した瞬間、セフィロスの姿が消える。動揺が走るその場に、どこからかセフィロスの声が響き渡った。


「我らの役目は黒マテリアを主人のもとへ運ぶこと」
「……我ら?」


もう、答えはすぐそこにある。
主人が誰で、「我ら」がなんなのか。


(…ジェノバ、)


響く声がどこからくるのかはわからないけれど、辺りには未だ嫌な気が立ち込めていて、星の敵意は消えていない。セフィロスの不気味な笑い声が響き渡る中、瞳を閉じる。自分のうちに眠る力を喚び起こすように集中して。


空に、何かを感じて瞳を開く。
再び何かが降り注ぐ。今度は、私たちを一直線に目掛けて。


——キン、と金属の触れ合う音が響いた。それが発する風圧で他の皆が膝を着く。
目があって、それはニヤリと笑った。


「…お前は、なんなの」


それは答えなかった。
力を込めて刀を振り払えば、ふわりと舞い上がってわたしたちの前に降り立つ。クラウドが再び立ち上がって、それにつられるように他のメンバーも戦闘体勢を整える。白い羽を数度羽ばたかせて、高く舞い上がった。


「さっき消えたと思ったら今度は偽物かよ!」
「…いや、…さっきのセフィロスも…」


ユフィの叫ぶような声と、それに冷静に答えるクラウドの声が聞こえる。
降り注ぐ赤い光を相殺するように空に向かってブリザガを放つと、それを合図にクラウドとティファが駆け出した。


炎属性の技を中心に攻撃してくることに気付いて、クラウドとティファにバファイをかける。二人は一瞬戸惑ったように自分の体を見たが、すぐに目の前の敵へと向かっていった。


(——そうか、この魔法も、この世界にはない…)


バ系魔法。一度だけ、特定の属性を持つ攻撃を無効にする効果のある白魔法だった。炎に触れると、二人の周囲を漂っていた赤い光がそれを包んで魔法の効果を消し去る。それを見届けて、もう一度バファイを唱えて再び剣を構えた。


炎による攻撃を封じてしまえば、そのモンスターはさしたる脅威ではなかった。
しばらくしてそれがライフストリームに還るのを見送って召喚を解くと、地面に降り立つ。先を埋め尽くすように倒れていた黒マントたちは姿を消して、不気味なくらいの静けさがあたりを包み込んでいた。


「ジェノバ細胞……なるほどな。そういうことか。ジェノバはリユリオンする、か」
「…リユニオン…?」


聞いたことのない単語に首を傾げるが、ティファは何かに気がついたように声を上げた。


「セフィロスじゃない!? 今まで私たちが追ってきたのはセフィロスじゃなかったの?」
「説明はあとだ。今はセフィロスを倒すことだけを考えるんだ」
「でもセフィロスは……」
「セフィロスは、いる。本当のセフィロスはこの奥にいるんだ。どうしようもなく邪悪で どうしようもなく残忍……しかし、とほうもなく強い意志をこの星の傷の奥底から放っている」


クラウドが迷宮の先を睨みつけるようにそう言った。先ほどのモンスターが消滅したそこには、黒マテリアがふわふわと浮かんでいる。クラウドが歩み寄って、その黒マテリアを手に取った。


「……黒マテリアは俺たちの手にもどった。あとはセフィロスを倒せばすべてを終わらせることができるんだ……」
「黒マテリアは、この先 持って行かないほうがいいわ。だれかに預けたらどう?」


ティファの提案に、クラウドはバレットへと歩み寄って黒マテリアを渡す。
手に入れた黒マテリアを渡さないため、二手に分かれて片方がセフィロスを追うことになった。先へ進むクラウドとティファに、レッドXIIIとシド、ユフィが加わる。


「ユリアは?」
「わたしは此処にいるよ」
「お前、いいのか?セフィロスの目論見知るために来たんだろ?」
「…うん、何か…嫌な予感がするから」


黒マテリアを持ち先に進まないことが確定しているバレットが不思議そうに尋ねるので、苦笑いを浮かべた。


実際、星の声が何を告げようとしているのであれ、ここで黒マテリアから離れるのは危険なことに思えた。これを使うためにセフィロスがここにいるのなら、なぜこうもあっさりと黒マテリアを手に入れることができたのだろう?


——まるで、クラウドがそれを運ぶことに意味があるかのように。


「…何があっても、黒マテリアをセフィロスに渡しさえしなければ…だから…クラウド、セフィロスは…よろしく」
「…ああ」


クラウドがわたしを見て頷いた。