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「電磁波についてだけれど、わたしには詳しいことは調べられなかったの。けれどもう使われていないはずの施設のセキュリティが最新の技術によって整備されているなんて明らかにおかしい。おそらくSALという研究所で何かが行われているのは間違いない。きっと貴方はそれを調べに行くのだろうけど…気を付けて。なんだか嫌な予感がする…太陽光や、海流、風力、自然のエネルギーがこれだけ豊富にあるこの島でわざわざデュエリストからエナジーを集めるなんて普通はしないことだから…」


そう言って俯く名前の映像がぶち、と音を立てて消えた。
ヨハンは目の前で目覚めたアモンがデスベルトについて話しているのを聞きながら、その映像ーー名前からのメールのことを思い出していた。


「コブラの居場所なら心当たりがある。コブラとオブライエンが森の奥にある施設に向かっていくのを見かけたんだ。夜中に二人を見つけ、不思議に思って後をつけたんだ」
「森の奥の施設…?」


アモンの言葉に十代と翔が考え込むように俯いた。それをみてヨハンが言葉を漏らす。


「それ、もしかしてSALっていう名前じゃないか?」
「ああ、そうかもしれない。アニキがサルとデュエルしたときの、例の研究所のことじゃないかな。SAL…サルを研究してたっていう」
「…まんまだドン」


剣山が呆れたようにそう返すが、翔と十代、そして明日香は不思議そうな表情でヨハンの方を向いた。あの時は彼らが1年生だった頃、剣山でさえ入学する前だ。当然今年に入って留学してきたヨハンが知っているはずがない。


「お前、なんでSALを知ってるんだ?あの時お前はいなかっただろ?」
「ああ、実はオレにはちょっとしたツテがあってさ。聞いたんだ。ソイツが言うには、その研究所はもう使われていないはずなのに、最新のセキュリティ技術で完全に守られているらしい。だから何かあるとしたらそこだろうって」
「へー…お前も人脈が広いんだな」
「まあね。ここは南の孤島で自然エネルギーも豊富にある。ただ何かを実験したいだけならそれだけで事足りるはずだ。わざわざ人間からエナジーを集めることには何か意味がある、そう言っていた」
「確かに、全校生徒から倒れるまでエナジーを集めるなんてふつうに考えたら変っす。なにかあるっす」
「じゃあそこに行けば2人の行方だけじゃない、目的も掴めるかもしれないわけだね」


ヨハンの言葉に難しくてよくわからない、とぽかんとする十代を尻目に他の面々は考え込むような表情を浮かべた。ヨハンは周りを見渡してそれを確認し、十代をみて少しだけ笑みを浮かべた後に、再び真剣な表情に戻る。


「ここにいても始まらない。そこに行って、2人を探し出そう!」


それに全員が頷いた。
アモンがそれを笑みを浮かべてみていることには誰も気がつかなかった。



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