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オベリスク女子寮から人の目を避けるように歩いて森に出ると、名前はゆっくりと歩いてゆく。やがて森の奥に迷彩柄の直方体型の建造物が唐突に現れた。


「ここね…」


扉が開かれているそこは、既に誰かが入った後のようであった。おそらくヨハンや彼の友人たちが先に入って行ったのだろうと名前は推測する。扉を潜ると、建物の中には暗闇が広がっていた。天上を見れば電気はあるがすべて消えているようだ。


「停電…?」


名前は建物の構造図を思い出す。この建物はデュエルに関する動物実験を行っていた施設であり、地上にあるのはほとんどが資料室で、研究室は地下に存在している。


「電力がないのなら、エレベーターは動かない…でも非常階段なんて…あら…?」


名前は奥の壁に穴が空いていて、そこからロープが下へと伸びているのを見た。近寄ってみると、それは地下へと続いている。再び施設の見取り図を脳内に描いて、此処は通気口であることに気づく。


「…エイト」
「はい、マスター」
「この通気口を降りて地下の実験施設へ行くね」
「…かしこまりました」


2人は短い会話を交わした後に、名前が不意にサイレント・マジシャンLv.8に手を伸ばした。一瞬、その純白の衣がまばゆい光を放つ。そしてサイレント・マジシャンは名前に「触れた」。


「久しぶりだけれど、うまくできたみたい」


にこりとサイレント・マジシャンLv.8に微笑みかければ、彼女もおなじ微笑みを返した。そうして名前を横抱きにするとふわりと浮かび上がり、通気口を通ってゆっくりと下降してゆく。やがて暗闇の向こうへと2人の姿は消えて行った。



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