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突然に響き渡る警報。
逃げる彼らは途中で男ーーオブライエンの力を借りながら、建物の中枢部へと到着した。ほんの少しの間であったが多少体力の回復したらしいヨハンと十代は一人で走って、そして7人は少し開けた場所に出た。


「たった今、大きな電磁波が…」
「俺も感じたドン」


そう言う2人。計測器の針は大きく揺れている。目の前にある大きな機械からでているというその電磁波。名前は無言で考え込んだ。ーーこんな機械を用意してまで、エナジーを使ってすることとは何か?抱えていた嫌な予感はどんどんと大きくなって、警報のように脳内に響き渡っている。


やがて一人の男が笑いながら、機械の中にあるエレベーターを昇っていった。明確に彼らを誘い出そうとするそれに、ヨハンは警戒の色を見せたが、十代は構わずに走り出す。それに倣って皆追いかけるように上へと続く階段を駆け上がった。


「よく来たな、遊城十代…そして其処にいるのは一体誰かね?私は校外の者をここへ誘ったつもりはないのだが…」
「コブラ…ッ!」
「誰だって、構わないでしょう。貴方は目的のためにそのデスベルトによってデュエルエナジーを十分に引き出すことができればそれでいい」
「その通りだ。なかなかの頭脳を持っているようだが、そこまで分かっていれば、お前達にできることなど何もないことも分かっているだろう」
「いいえ、あなたが今すぐにこのデスデュエルを中止すればまだ!」
「そうよ、みんなを元に戻して!」


男を睨め付ける名前に同調するように叫ぶ明日香。しかし男、プロフェッサー・コブラは笑みを絶やさない。


「中止しようとしまいと、もはやこの学園に未来はない」
「何ッ!お前…!」


コブラの発言につかみかかるようにそう返す十代を他所に、コブラは持っていたスイッチを押した。とたんに彼らの立っていた場所ーーヘリポートが動き出した。咄嗟にヨハンは名前の肩を抱く。それは高く昇ってゆき、学園が見渡せるくらいの高さで止まる。つまりーー逃げられない。無事に帰るためにはデュエルをしなければ、というコブラに、名前は気づく。ーーおそらく、必要な量のデュエルエナジーを彼は、自らのデュエルによって集めようとしているのだということに。けれど此処まできて、この場所で、名前にそれを止める術はない。その予想を裏付けるようにコブラが十代を指名しても、名前は拳を握りしめて俯くことしかできなかった。


「「デュエル!!」」


そして勝とうが負けようが、おそらくなにかよくないことが起きるだろうとわかっているのに、その戦いの火ぶたは下ろされてしまうのだ。

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