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デュエルディスクが起動した瞬間、名前の体に悪寒が走った。固まる彼女を他所にデュエルは進行してゆく。E・HERO クレイマンを守備表示で召喚した十代に、プロフェッサー・コブラはフィールド魔法を発動する。毒の沼地がソリットビジョンを通して映し出されたころには名前は体を小さく震わせていた。


「…名前?どうした、大丈夫か?」
「…なにかが、わたしたちをみてる…」


ーー十代を苦しめろ、そうすれば…お前の望みは叶う。
耳の奥でどこかからそんな声が響く。黒い影が、コブラの周囲を蠢いているのが名前には見えた。ヨハンはそれを認知していないけれど、不意に現れたルビーを通して何か悪いものがコブラの近くにあることは感じ取っているようだった。名前はなにか不気味な「目」がこちらを見つめていること、その「目」が明らかに十代を目的としていることに不安を抱きながら、デュエルを続ける十代の姿を見つめる。


「お前の番だ」


コブラの言葉に対して反応を返したのは十代ではなかった。


「プロフェッサー・コブラ!」


ヨハンの声が響く。
名前の耳には未だ十代を苦しめようとする「何か」の声が聞こえてくる。


「プロフェッサーコブラ、次のターンの前に聞かせてくれ。貴方の真の目的は何だ…?何を企んでいる!俺には見える、貴方にはどす黒く…恐ろしい精霊が取りついているのが!それが貴方の黒幕なのか?」


ヨハンがそう叫べば、コブラは即座に何も企んではいない、と返した。
それを疑うヨハン達に対して語られたのはコブラの過去、そして望みーー心の、闇。何者かの鱗を持つコブラの、「希望」。任務で出会った謎の存在と、失った息子のこと。名前はそれを聞きながら、脳裏に蘇る様々な情景を必死に打ち消した。顔を俯けて、瞳を強く閉じる。


ーーお兄ちゃん…。
名前の口から小さく溢れた声をヨハンだけが拾った。



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