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「ペガサス会長が、俺にこのカード達をくれたんだ」
「宝玉獣、名前は聞いたことがあるわ…確かカエサルの…」
「ああ!詳しいんだな」
「わたし、デュエルモンスターズの研究者だから…」
「そういえばそうだった。でも一体何の研究をしてるんだ?」
「…精霊の、デュエルモンスターズの、精霊のことを調べてる」


黒いソファに隣り合って座り、テーブルにはカードを広げて、お茶を飲みながら過ごす穏やかな時。デュエルモンスターについて話す名前はデュエルをしないとは思えないくらいに様々なことを知っていて。


「この世界には宇宙が12の次元に分かれて存在しているの。他の次元のことはよくわかっていないけど、精霊が住む場所もあって。そういう場所のことや、この世界での精霊と人間との関わりのことを。例えばエジプトでは石版を用いて精霊を召喚したし、まだ謎の多い南米には何かのドラゴンと思わしき地上絵が残ってる。ペガサスさんがデュエルモンスターズを生み出す前から人間はデュエルモンスターズと、そしてその精霊と関わりを持ってきたから」

「わたしは精霊が見えるけれど、それが見えなくても絆を育む人たちのことを知っている。もっとデュエルモンスターズのことを分かって、精霊のことが理解されれば、そんな人たちにも彼らがより近く感じられるかなって。多くの人はそこに宿る力のことをなにも知らずに、デュエルの道具だとしか思わない人さえいるけれど、彼らにも感情があるでしょう?心があって、絆があるでしょう?それを1人でも多くの人に知ってほしいの」


迷いのない口調だった。名前の瞳はどこまでも真っ直ぐで、だからヨハンは彼女が自分と同じ思いを抱いていて、自分と方法は違うけれど自分の目標のために生きていることが分かった。ヨハンの胸にも、デュエルを続ける理由はある。ずっとずっと昔から、たしかに存在するその目標。ーー精霊と人間の、架け橋になること。名前と、同じ。デュエルによってそれを成し遂げたいヨハンと、研究によって、自らが知り伝えることによってそれを成し遂げたい名前。


「俺も、デュエルをする理由は同じなんだ。精霊と人間の、架け橋になること」
「…とても、素敵ね」
「名前も、一緒だろ?」
「そうね。きっと、やり方は違うけど、気持ちは同じ」


初めてあった時に名前が、勇気を振り絞ってここに呼ぼうと思ったのは、ヨハンに対して、自分と同じように精霊を見る少年に対して、何かを感じたから。ルビー・カーバンクルを家族と呼んだその優しい眼差しに感じたことがその時にはよく分からなかったけれど、こうして話してみれば簡単なことだった。ーー同じ思いを抱いて生きている。


「今日は楽しかった。ありがとう」
「ああ!俺も!ルビー達も楽しそうだったぜ」


また遊びに来てもいいか?
ーーもちろん。


穏やかな時間は終わらない。



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