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しん、と静まりかえる部屋に一人。
粗方荷物はまとめた。他はもう置いていこう。持って行ったところで必要としない。
思い出は、いらない。




「朔ちゃんどう?まとまった?」

「うん、これだけ持っていくことにした」

「これだけってあんた、鞄一つしかないじゃない」

「本当だ。朔ちゃん、まだ時間あるしまとめるの大変そうなら私たちも手伝うよ?」

「花、京子ありがとう。でもいいんだ。これしか持っていかない」


一通りの衣類と化粧品とか本当に必要なものだけ。
それだけでいいという私を二人は微妙な顔をして見てくるけど、これ以上増やすつもりはない。
あの人にもらったものは全部置いていく。
それでいい。



「……本当に何も言わず行くつもりなのね」


ふと呟いた花にただ、笑む。


「後悔、しないわけ?」

「さぁ。でもそれは過ぎてからじゃなきゃわからないよ。だって、後悔ってそういうものでしょ?」

「でも、せめてつっくんにだけでも…」

「言わない。それじゃあ意味がないもの」


沢田に伝えてしまったらあの人にも伝わってしまうから。
言わないでといえば平気かもしれないけど、沢田は優しいから。



「…っし。じゃあ、そろそろ行きますか」

「新しいところ着いたらあたしたちにぐらい連絡しなさいよ?」

「そうだよ!私たち待ってるから!来なかったら怒るからね?」

「わかりました。二人にはお世話になったし必ず連絡します」

「破ったら探し出しておごらせるからよろしく!」

「うわっ、絶対連絡するわ」

「ふふふっ、約束だよ。朔ちゃん」

「…うん」






三人笑いあって部屋を出る。
最後に少し振り返って。









「……さよなら」







カチャン、と鍵を閉めた。







さよなら、愛しい人
ここにはもう戻らない


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