◇1
「俺、先輩のことが好きです!」
「ごめん、無理」
いつも通りボールを追い、打ち返す。
テニスは好きだ。
テニスをしていると何も考えなくてすむ。
でも最近ふとした時に思考が止まる。
コートの外を見るといる、彼女の姿。
見ているものも考えていることも最初はわからなかった。
けれど、知ってしまった。
彼女はあの人を追いかけている。
「長太郎ー!ボール飛んでったぞ!」
「あぁっ!すいません宍戸さん!取りに行ってきます!」
フェンスの所まで飛んでいったボールを拾いに行けば、そこはちょうど彼女……朔先輩のがいた場所の近くだった。
「お疲れ様、鳳君」
「あ、お、お疲れ様です!」
「今日も宍戸君に怒られてるんだね」
「……見られてたんですね。恥ずかしいな…」
あはは、と笑えば負けないで頑張れと朔先輩は笑った。
「なんや、朔また来とったんか?」
ふと、聞こえた声に振り向けばいつのまにか、忍足先輩が傍に来ていた。
「あんたがサボってないでちゃんとやってるか見に来たのよ。茜の代わりにね」
朔先輩が呆れ混じりに言うと、忍足先輩は顔を曇らせる。
「茜まだ休んどるんか…」
「そうよ。寂しがってるからお見舞い行ってあげてよ?」
「遥に言われんでも行くわ。ほな、俺は練習戻るわ。鳳も怒られんうちになー」
「はい!すぐ戻ります」
忍足先輩の、おーと片手を振り去っていく後ろ姿をじっと眺める朔先輩。
あぁ、またそんな顔をするんですね。
「……朔先輩」
「なーに?鳳君」
「俺じゃ、だめですか?」
「…前にも言った気がするけど、無理ね」
ごめんね、と笑う姿が切なくて。
「それでも好きです。あなたのことが」
「……君も大概馬鹿だねー…」
「馬鹿で結構です。だから、隣にいさせて下さい。」
あなたを笑顔にすることができるのであれば、恋人になれなくても……あの人を忘れられるまで傍にいさせてください。
one love
(彼の気持ちを受けとめられない)
(それでも、僕はあなたが好きなんです)
(たとえ、叶わなくても)
「馬鹿で結構です。だから、隣にいさせて下さい。」は
確かに恋だった様よりお借りしました。
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