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「俺、先輩のことが好きです!」

「ごめん、無理」












いつも通りボールを追い、打ち返す。
テニスは好きだ。
テニスをしていると何も考えなくてすむ。
でも最近ふとした時に思考が止まる。
コートの外を見るといる、彼女の姿。
見ているものも考えていることも最初はわからなかった。
けれど、知ってしまった。
彼女はあの人を追いかけている。





「長太郎ー!ボール飛んでったぞ!」

「あぁっ!すいません宍戸さん!取りに行ってきます!」


フェンスの所まで飛んでいったボールを拾いに行けば、そこはちょうど彼女……朔先輩のがいた場所の近くだった。


「お疲れ様、鳳君」

「あ、お、お疲れ様です!」

「今日も宍戸君に怒られてるんだね」

「……見られてたんですね。恥ずかしいな…」


あはは、と笑えば負けないで頑張れと朔先輩は笑った。



「なんや、朔また来とったんか?」


ふと、聞こえた声に振り向けばいつのまにか、忍足先輩が傍に来ていた。


「あんたがサボってないでちゃんとやってるか見に来たのよ。茜の代わりにね」

朔先輩が呆れ混じりに言うと、忍足先輩は顔を曇らせる。


「茜まだ休んどるんか…」

「そうよ。寂しがってるからお見舞い行ってあげてよ?」

「遥に言われんでも行くわ。ほな、俺は練習戻るわ。鳳も怒られんうちになー」

「はい!すぐ戻ります」





忍足先輩の、おーと片手を振り去っていく後ろ姿をじっと眺める朔先輩。
あぁ、またそんな顔をするんですね。


「……朔先輩」

「なーに?鳳君」

「俺じゃ、だめですか?」

「…前にも言った気がするけど、無理ね」


ごめんね、と笑う姿が切なくて。


「それでも好きです。あなたのことが」

「……君も大概馬鹿だねー…」

「馬鹿で結構です。だから、隣にいさせて下さい。」


あなたを笑顔にすることができるのであれば、恋人になれなくても……あの人を忘れられるまで傍にいさせてください。






one love
(彼の気持ちを受けとめられない)
(それでも、僕はあなたが好きなんです)
(たとえ、叶わなくても)





「馬鹿で結構です。だから、隣にいさせて下さい。」は確かに恋だった様よりお借りしました。


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