◇1
思えば今日は朝からついてなかった。
目が覚めたら8時。
なんで鳴らない!?と目覚まし時計を見れば電池切れ。
学校への道にある信号は全部赤。
寝坊したおかげでお弁当は忘れるし。
大っ嫌いな数学では当てられるし。
今日は本当についてないと思う。
何度目かの溜息を吐いて、部室まで歩いていく。
これから大好きな部活ができるのに、足取りは重くやる気が出ない。
不意に頬に何かが当たって、不思議になり顔をあげようとした瞬間。
―――…バシャンッ!
…まさかの水が降ってきた。
へばりつく髪をかきあげ、降ってきたであろう頭上を見ると顔面蒼白の女子生徒が一名。
「ご、ごめんなさい!下にまさか人がいるとは思わなくて…!」
「……あー…いい。いいよ。ぼーっとしてたあたしも悪い」
でも…と続きそうになる言葉を遮って、次は気をつけてねと手を振っておいた。
それにしても、濡れた制服は気持ち悪い。
「……朔先輩?」
制服まじで気持ち悪いわぁ…とか色々考えていた矢先、後ろからそれはもう大層不思議そうな声色で声をかけられた。
「…よ、越前」
シュタッと片手をあげれば越前は溜息。
「よ、じゃないでしょ…なんでそんな濡れてるんすか」
「水が降ってきたから?」
「疑問系で返すのやめてくんない?」
「タメ語使うのやめてくんない?」
そんな反抗虚しく、越前は再度溜息を吐いたかと思うと、人の手を引っ張り歩きだした。
明らかに進んでいくのは男子テニス部の部室方向。
「あたしこれから部活なんだけどー…」
「そんなずぶ濡れのまま行く気?」
「部室に行けば何かしらあるし」
「いいからついてきてよ」
人権無視?なんて思いながら手を引かれていく。
抵抗するのも面倒だし。
あー…後輩にまでなめられて本当今日はついてないなぁ。
男子テニス部部室に着くと、まだ誰も来ていないらしく静かだった。
「はい、朔先輩」
「あー、ありがとねー」
投げられたタオルを掴むと頭をわしゃわしゃ拭いた。これで後は着替えがなー…なんて呟いてると、また何かを投げられた。
「何これ?」
「俺のTシャツ。そのままよりはマシでしょ」
「え、サイズ入るかな」
「喧嘩売ってるんすか?」
だって小さい…とは言えず、着てみれば思いの外大丈夫だった。
むしろ、少し緩い感じさえある。
「……実はサイズごまかして買った?」
「やっぱり喧嘩売ってるよねそれ」
ハァー…と1日に吐く溜息の量を超えてるんじゃないかというくらい深い溜息が零れた。
なんだろう。凄くむかつく。
「先輩まだ濡れてる」
「え?…うわっ」
パッとタオルを取られたかと思うと、少し乱暴に拭かれた。
痛いよ越前。
「越前てば、世話焼き?」
将来小姑?なんて笑うと今度は頭をこづかれて。
「こんなことするの朔先輩にだけに決まってるじゃん」
そんなこともわかんないわけ?と小馬鹿にした笑いをされた。
え?ど、どういう意味?
「俺、前から朔先輩のこと好きなんだけど」
先輩鈍すぎ・と笑うと頬に軽くキス。
「……えぇー!?」
人生山あり谷あり
(ちょ、近い!近い!)
(これぐらいで赤くなるなんてまだまだだね)
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