◇1
「「阿散井せんぱーい!」」
「おー、なんだ?」
「私たちこれから実践なんですよー!すごい緊張してて!」
「気引き締めてきゃ大丈夫だろ。上の人の指示はちゃんと聞いとけよ?」
「「はーい!」」
恋次にきゃぴきゃぴ(古い?)話しかけていく女の子たち。
去り際になぜか睨まれる私。
「あんたには負けないってか…」
「なんだよ、どうかしたか朔?」
「んー…なんでもない」
恋次の疑問ににへら、と笑って誤魔化す。
というかね、睨む相手間違えんなよって話ですよね。
そんなことをつらつら考えつつ、恋次と二人他愛もないことを話しながら歩く。
「…あ、朽木さんだ」
歩く先に見覚えのある黒髪の少女を見かけて立ち止まる。
呼びかけようと手を上げたところを恋次に止められた。
「どうしたの?朽木さんに声かけないの?いつも呼びとめるのに」
「あ、いや…今はいい。あいつも忙しいだろ。行くぞ」
「あ、うん」
そういって朽木さんとは違う方向へ進んでいく私たち。
ほら、さっきの女の子たち。
見てみなさいな、今の恋次の顔。
睨むべき相手は私じゃないでしょ?
(私ならそんな顔させないのに……いや、違うか。私じゃそんな顔させられない、が正解だわ)
「…恋次―桃たちんとこ行かない?」
「急になんだよ」
「いいじゃーん。次暇なんだし気分転換!はい、れっつごー!」
「ちょ、おいひっぱんな!」
痛むな痛むな、私の胸。
笑え笑え。
頑張れ表情筋。
泣いたりなんか、しない。
「桃―!イヅルー!お団子食べいこー!恋次のおごりで!」
「おいこら!ふざけんなよ!」
「あははっ!きーこーえーなーいー!」
失恋ソングが耳に入った
(あのこにはどうしても敵わない)
(泣いていいんだよ、朔ちゃん)
(ありがとう、桃。でも、泣かないよ)
title:
10mm.
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