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放課後。
夕暮れどき。
一人机に突っ伏して溜息一つ。


ガラッと扉が開いて、目を向ければ数学の片倉先生が教室内へ入ってきた。



「先生ー遅ーい」

「悪い。会議が長引いてな……前田はどうした」

「逃げた」

あはは、と苦笑すれば先生のこめかみに青筋が浮かぶ。
その表情はさながらヤのつく人だ。



「……まぁいい。補習始めるぞ」

「はーい」





補習が始まって、10分。
静かすぎる教室が耳に痛い。
先生をちらりと見れば、夕陽がかかって端正な顔立ちがより一層、綺麗に見えた。



「……田中、集中しろ」

「………はーい」



返事はするものの、目は釘付けのまま。
あぁ、なんで同じ人間なのにこうも違うんだろう。
実は違う種族とか?
美族、みたいな(美人美形しかいないんだよ)




「先生ー…」

「答えなら教えないからな」

「ケチー……じゃなくて、明日の追試が受かったらさ?ご褒美ちょうだい」

「……追試の時点で褒美はねぇだろ」

「いいじゃん、ご褒美あったほうがあたし頑張れるよー」


ねー?と笑えば、先生も呆れ交じりに笑った。
おぉ、やっぱり美族!



「あんね、あんね、あたしもう欲しいもの決まってんの」

「やるとは言ってねぇぞ」

「あんねー…追試合格したら、先生の愛ちょうだい?」

「………は?」

「よーし。それじゃあ、そろそろ帰って一夜漬けでもするかな〜。あ、ご褒美楽しみにしてるから!」

「お、おい…田中…?」



先生の声を遮ってバイバーイと笑って教室を出ていった。





一人残された先生は顔を赤くしてたとかしてなかったとか。








あなたが欲しい
(あ、好きって言い忘れた)



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