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後半少し注意


少し前に先生に君は弔とはまた違った歪みを持っているねと言われたことがある。

何時だったかな、確か脳無の実験を見ていた時?

その時、先生の言っていることが理解できなくて、怪訝な顔をしてしまったと思う。

「例えば、なまえは脳無に対して何か思うことはあるかい?可哀想だなとか哀れだなとかそう言った感情も含めて」


「?特に何も…」

だって見知らぬ人がどうなろうがあまり自分には関係がない。

「それじゃあこれがなまえの知り合いだったらなまえは悲しい気持ちになるかな?」


「……」


「ほらね、ならないだろ?君は君が思っている以上にあまり他人に興味がないんだよ」

そんなふうに考えたことはなかった。
けれど、これまで自分と他人との生き方が違いすぎて、
あまり周りの人間と自分を同列に並べたことがなかったからかもしれない。


「頭が良くて将来を期待されていて誰にでも人当たりが良くて優しい、誰もが羨むはずの存在が
実は人に対して無感情な敵側の人間なんて、」



本当に滑稽だ。


表情こそわからなかったけれど、先生は確かに楽しそうに言っていた。


「私がそうしてくれって頼んだ訳じゃなくて、勝手に周りがそうやって私のこと評価してるだけだもん」

ちょっと不機嫌になったけれど、

君はそれでいいんだと返された。




朝を告げるアラームが鳴り
起きなければいけない時間になる。

昨日の夜は弔の帰りが遅くて、
寝る時はいなかったのにいつの間にか隣で寝ている。
起こさないそうにそっと握られた手を
離す。

身支度をして
終業式が行われる学校に向かった。



「おはよーなまえちゃん」

「うん、おはよう」

いつもと変わらない教室風景。
廊下を歩いていたら

「みょうじ、進路は就職するか推薦で大学進学かどうするんだ?」

教師に声をかけられる。

「実はまだ迷ってて」

それっぽく言うと

「まだ時間はあるからな。どちらを選択してもみょうじの将来は明るいぞ」


私は一言も自分進路に関してこの人に話したことは無い。
向こうが勝手にそう思い込んでいるだけだ。

私がどちらも選択しないと知ったらどうなるんだろう。



終業式後、話したこともない男子生徒から呼び出された。
こういうことは割と頻繁にあるから予想はつく。

ヒーロー科に在籍しているというその男は
「ずっと前からみょうじさんのこと気になってて、良かったら付き合って欲しい」

と言ったけれど
この人は一体私のどこが好きなんだろう。
自分の顔の造形について今更どうも思わないけれど、恵まれていることは理解している。
それとも私が経営科の首席だから?

顔が良くて頭が良い彼女が欲しいの?

じゃあ私が実はろくでもない母親から生まれて、売春行為をしてこれまで生きていたと知ったら

幻滅して、汚いと罵るのだろうか。

私はこれまで一言も自分のことを
そんな才色兼備なイメージ持って見てくれと言ったことは無いのに。

勝手に向こうがそう思い込んでいるだけだ。


告白に関してはやんわりお断りをして終わったが

その日はその後もいまいちすっきりしなかった。











その日の夜。


「…考え事?余裕だな」


どうやら上の空だったのが伝わってしまったみたいで、






「ん…ッちが…っひゃん…」

否定の言葉を言い切る前に
自分のナカの更に奥を弔にグッと抉られる。
痺れるような快感が一気に体中を巡った。


「違わないだろ」


そのままゆるゆると奥を刺激され揺すぶられ


「ッ…ぁ、や…ッん…んんっ!!」

ただただ高い声を洩らすことしか出来ない。


「後で話聞くから、今はちゃんとこっち集中しろ」

「んっ……ぅん…っ」

辛うじて返事をし、私は与えられる快楽の波に身を任せた。








「ということがあって。」

あの後弔はちゃんと私の話を聞いてくれた。


「まあ…普通男としてはブスより美人のがいいだろ」

「そうなの?!」

そんなもんなのか。
いやしかも私が気にしているのはその事だけじゃない。


「あのな、何をごちゃごちゃ考えてるのか知らないけど、他人がなまえのことなんと思おうと関係ないだろ」

「…うん」

「なまえのことは俺だけが知ってればいいことなんだから。俺はなまえの全部を理解した上で
なまえが好きだよ」


「っ…うん…!!」

そうだった。弔が私のことを好きでいて必要にしてくれればそれで良かったんだ。
はっきりと言葉にされると満足感で満たされる


「すき…弔大好き」

「ん」

ぽんぽんと頭を撫でられて更に安心したのか、私はいつの間にか寝てしまった。

「ほんと、手の掛かるやつ」
俺がなまえ嫌いになったり、手放すことなんて有り得ないだろ。

そう言ってしばらく弔が私の頭を撫でていたことを私は知る由もなかった。