03
(死柄木side)
死柄木弔はある日、自分が『先生』と呼ぶ男から
「君に会って来て欲しい子がいるんだ」
と言われ、おもむろに1人の人間のデータを見せられた。
添えられた写真を見ると
そこには顔の整ったしかしどこかあどけなさの残る女が写っていた。
「何この女。」
死柄木は何故先生がこの女を自分に会わたいのか全く理解出来ず
少しのイラつきを見せながら答えた。
会ってどうする、
何か気に入らないことがあって殺しておきたいのか、
最近先生たちが個性を持った人間に対して実験している得体のしれない何かに使いたいのか。
しかし返ってきた言葉は意外で。
「彼女、面白い個性を持っていてね。」
どうやら彼女自身、その事に自分で気がついていないみたいだけど。
と、先生は続けた。
その言葉に少しの興味と疑問を持って資料を読み進めると
彼女の年齢が思ったより若いことや
この近くに住んでいることなど
彼女の個人情報などが事細かに書いてあった。
そして
彼女の持っている個性は無意識に自分に害のある個性を無効化してしまうものらしい。
「つーか何で本人が自覚のない個性を先生は知ってるんだよ」
「ここ最近、ニュースにもなっているけど若い女性が連続して殺される事件起きているのを弔も知っているだろう」
「あァ…あの悪趣味な」
犯人は、若い女との性行為中に相手の女性を個性を使って殺すことで快楽を得る異常性癖の持ち主だった。
彼は毎夜、違法に売春されてる若い女を買っていて、ここ数ヶ月で何人もの女性が犠牲になっていると報道や新聞で見かけたことがある。
ある日、そいつがこの写真の女を一晩買ったことがあるらしい。
そういえば資料に写真の女が売春紛いの事をさせられていると記述されていた。
「でもね、彼が言うには、彼女には全く個性が効かなかったらしい。」
そのまま何事もなく彼女はその男から一晩分の金をもらい男の元を去っていったそうだ。
「……」
「会ってどうするかは弔次第だよ。」
先生は楽しそうに言った。
答えは分かっているはずなのに悪趣味だ。そうつぶやきながら死柄木はもう一度写真に写る女の顔を見た。
「みょうじなまえ…」
不思議はことに先程まで感じていた苛立ちは消えてなくなっていた。