05

(死柄木side)



先生から会ってこいと言われた女の話を聞かされたその日の夜、
死柄木はアジトにしているバーのカウンターに座り、その女について思考を巡らせていた。

特に彼女の個性について。


個性を無効にしてしまうということは、
死柄木が彼女に5本の指で触れても彼女は壊れないということだ。

これまでずっと、壊したいものも、壊したくないものも全てこの手が壊してきた。

だからこそ触れても壊れない人間がいるとしたら、どうしても自分の傍に置きたい。



「どうしましたか、死柄木弔。」

いつもと違う様子の死柄木に思わず黒霧は声をかける。





「明日、俺をこいつの元にワープゲートで連れて行け。」



いやいや待て待て、そんなこと突然言われても。
と、黒霧は困惑しながら死柄木に渡された写真と資料に目を通す。



そして、彼の様子がいつもと違う訳を理解した。




「彼女を仲間に引き入れたいのですか?」


「さァどうだろうな?」




曖昧な言葉とは裏腹に死柄木は酷く上機嫌良く笑っていた。









次の日





「おい黒霧、お前、場所間違えてないよな」



それはない、と黒霧は心の中でツッコミを入れながら
確かに今ここに目的にしていた人物はいないことを確認した。


その代わり部屋には2人の男女がいて、
突然現れた自分たちに対して騒ぎ立てる男をあっという間に死柄木は


「うるさい。」

の一言で彼を破壊してしまった。



そして、その隣で腰を抜かす女に目をやる。





「あぁ、アンタ母親か
そういやなんとなく顔似てるわ。」





しゃがみこみ、顔を覗きこむ。

「ヒッ…」


「気ィ狂ってるよな、アンタ。
高校生の自分の娘にウリさせてその金で自分は男作って遊んで生活してるんだもんな。」




震えながら涙を流し恐怖のあまり動けないその女に対し死柄木は続ける。


「楽しいよなァ?母親である自分の元から離れるわけないって知ってんだろ?


もうほんと、クズすぎてサイコーだよ!!!」







けどさアンタの娘

もうじき、俺のモノになっちゃうよ。









そう、死柄木が言い放った時、

玄関の扉がガチャりと開く音と共に


何が起こっているのか飲み込めず呆然と立ち尽くす彼女の姿がそこにはあった。



「だ…れ…?」




あぁ、やっとだ。やっと会えた。