無意識のゼロセンチ


(うーん)

仕事を定時で終えた後、スーパーで買い物をしながらなまえは頭を悩ませていた。

今度の休み、幼なじみと出かける際に何か日頃のお返しをしたいと思っていたものの
何をすればいいか全く思いつかない。

何か物をあげるのも、もともとお金がかかることはしないでいいと言われている。
かと言って料理を作るのは毎日やっているから今更…という感じだしお菓子類をつくって喜ぶタイプではない。

結局全くいい案が思いつかないまま
なまえがレジで支払いを済ませレシートを受け取ると、

「今、レシートを見せると豪華商品があたるくじ引きやってますよ」

と店員さんに案内をされた。

ラインナップを見ると予約が取れないホテルディナー招待券、アミューズメントパークの入園券などの豪華賞品から
洗剤やタオルなどの日用品と
ピンからキリまで。

こういうくじは大体参加賞のポケットティッシュしか引いたことないなまえは

(トイレットペーパーそろそろなくなりそうだし当たるといいなあ…)



と考えながらガラポンを回す。

数回ガラガラをまわすと転がり落ちてきてたのは




「おめでとうございます!!特賞のホテルディナー招待券です!」



「……ま、まじでか!!!」


突然舞い降りたくじ運の神様。
一瞬とてつもなく喜んでしまったが

冷静になって、よくよく考えると、こんなロマンチックな場所でディナーを一緒にする相手がいないことに気がついてしまった。


(あ、ていうかかっちゃんにこれ渡せば良くない?)

きっとかっちゃんにはホテルディナーに誘いたい相手のひとりやふたりいるはず。

これは名案だと思い、今度一緒に出かける際に頃合いを見て渡そうと
ディナー招待券を受け取り大切に財布にしまった。



そして土曜日。


「なまえ準備まだ出来ねーのかよ」


化粧や髪の毛は準備したものの久しぶりに休みで出かけるため
中々洋服が決まらない。
寝巻き姿でリビングをウロウロするなまえに爆豪は声をかける。

「待って待って、
ねえかっちゃん、どっちのワンピースがいいかなあ」

「んなもんどっちでもいいからさっさと着替えてこいや」

「だって決まらないんだもん、かっちゃん決めてー」

なまえは手に持っていた洋服を爆豪に見せる。

「じゃあ右」

「右?右〜ってこっち?」

「おーじゃあそれで」

「もー!適当!でもありがとうこっちにするね」

そう言って部屋に戻り着替えを済ませ、
2人はようやく出発した。



「さすが、都会のショッピングモールは広い…!」

「まァなまえがいた頃より随分店とか変わってるからな」

「かっちゃん先生、壊れちゃったキッチン用品を買い替えて実家に送りたいのと、都会でしか食べられない美味しいものが食べたいです」

「っても俺もパトロールくらいでしか最近来ねェからな、詳しい事はわかんねーへけどとりあえず1個ずつまわるか」

「はーい」


1度お店を周り始めると時間はあっという間に過ぎてしまい、2人というかなまえの用事を済ませた頃にはすっかり日が暮れていた。


「よし、これで行きたかった所全部行き終わったよ」

「買いたいもん買えたか?」

「うん。ありがとね。きっとお母さんもお父さんもよろこぶ!
ていうか今はなんでも自宅に配送してくれるんだね」

お陰で身軽です!とご機嫌に歩くなまえを見ていると
相当か時間を付き合わされたのもまぁいいかという気持ちになる。

小さい頃から優しくてお人好しで自分より誰かのことを考えてばかりだけど、やや優柔不断で。
どんなに辛いことがあっても笑顔で一生懸命な幼なじみのことを
ずっと爆豪は側で見てきた。

今日もひたすら悩んでいたのは自分の欲しいものではなく家族のための贈り物で。
大人になっても変わらない彼女の姿に
しばらくこれからも面倒をみてやろう、そう思っている。



「かわいいピアス。わ、セールになってる」


アクセサリー屋の前。
ここにきて初めてなまえは自分の物を買いたいと足を止めた。


「や、やすい!ちょっと待っててかっちゃん買ってくるね」

「ん、ここで待ってるから行ってこい」


さすがにアクセサリー屋に入るのは気が引けて、
店前で待っていると。





「爆豪」





ふと名前を呼ばれる。


「あ?…轟か」



自分を呼んだのは高校からの同級生。
職業柄よく顔を合わせるので珍しいことは何も無い。

「おまえこんな所で何してるんだよ、なんだデートか?」

違うと否定する前に今度は幼なじみが自分の名前を呼ぶ。




「かっちゃーんお待たせ!」







「みょうじ…?」


「…?え!轟さん!」

こちらは想定外のエンカウントにお互い驚いた顔をしている。


何となくややこしいことになったなと内心思う爆豪だった。


つづく