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そして翌日、約束した時間の30分前に私は待ち合わせ場所である駅前に到着した。


「(さすがに早く来すぎちゃったかな…)」


腕時計を覗き見て心の中でつぶやく。
昔からこういうタチで、誰かと約束や待ち合わせをすると、その時刻よりもかなり早めに到着してしまうのだ。

ちなみに入社初日のあのような失態は本当に滅多にない事なので、ただただ偶然やらかしてしまったというより他にない。


軽くあたりを見回してみる。
さすが土曜日というだけあって駅前には人が溢れていて、その中にヨハンさんの姿はまだないようだった。こんなに早く来てしまったのだし当然だよね、と思った時だった。



「ーユリ!ごめん、待たせたか?」
「ヨハンさん!」

ぽん、と軽く肩に手を置かれてそちらを見ると、肩で息をしているヨハンさんがそこにいた。どうやら走ってきたみたいだ。


「いいえ、全然待ってません。本当に今来たところで…。でも、どうしてこんなに早く?」
「それはオレも聞きたいよ。まさか30分前に来てるとは思わなかった。早めに家を出ておいて良かったよ」
「私はつい、いつものクセで…ヨハンさん?」


思わず彼の名前を呼んだ。
目の前の彼は息を整えたあと、私をじっと見て押し黙ってしまったからだ。


「…あ、いや。私服姿、初めて見るからさ」
「そういえばそうでしたね。一応春らしさを意識してみました!」


白の薄手のカーディガンに、淡いピンクのパステルカラーのワンピース。パンプスはベージュを合わせてみた。

実は割と女の子らしい格好もしちゃうんですよ、とちょっぴり得意げに告げると、ヨハンさんは少しだけ目を逸らして、一瞬迷った様子を見せたあとに言った。


「…可愛いな。すごく似合ってるよ」
「え…っ」


不覚にも、私の心臓はどきりと大きな音を立てて反応してしまった。ヨハンさんの頬はほのかに赤くなっていて、そんな表情で「可愛い」なんて単語を言われてしまったら、どうしようもなくなってしまう。


「ありがとうございます。…ヨハンさんもカッコいいです」
「っ!」


私もそう返した。
照れ隠しも兼ねているけれど、本音だ。白のシャツの上に黒の薄手のジャケット、それにデニムを合わせているという割とシンプルめな格好なのに、彼のモデル並みの体系がそれを完璧に着こなしている、と思った。


「…」
「…」


互いに言葉もなく俯く形になる。
どうしたらいいんだろう、この謎の緊張感。私も顔が赤くなってしまっていることに気付き、なかなかヨハンさんの方を見ることができなかった。
先に沈黙を破ったのはヨハンさんの方だった。


「そろそろ行こうか。オレ、昨日から楽しみにしてたんだ」
「…!はい!私も、どこに連れて行ってくれるのかすごく楽しみにしてました」
「ああ!期待しててくれよな」


そう言ってにこりと少年のような笑顔で微笑む。私はその笑顔に一瞬見とれたあと、はっと我に帰り彼の背中を追いかけた。

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