17


店内に入り、ヨハンさんと向き合ってテーブルに着く。メニュー表を開くと、どれもこれも素敵なものばかりで目移りしてしまう。


「ヨハンさん、どうしよう…もう全部食べたいです、私」
「ははっ、全部はさすがに無理だな。…ユリさえ良ければだけど、また一緒に来ないか?」
「えっ!!いいんですか?!」
「ああ。そうしてくれるとオレも嬉しいし」
「うわぁ…!」


それなら、と再びメニューとのにらめっこを始める。また来れるのなら無理に何品も頼むことはないと分かってはいても、どれもこれも魅力的でとても絞りきれそうにない。


「…ヨハンさんは、決まりました?」
「決まったぜ。相当悩んだけどな」
「むむ…」
「どれで悩んでるんだ?」
「このトパーズタイガーのホワイトシチュープレートか、レインボードラゴンの彩りピザで…うーん…」
「オレもホワイトシチュープレートも気になって悩んだな。ピザはオレも頼もうと思ってたよ」
「そうなんですか?じゃあ…」
「うん、そうだな!」


メニューからぱっと顔を上げて、ヨハンさんと目が合う。そして2人同時に「分け合おう!」と言い合った。
あまりにもぴったりのタイミング。
お互いに目をぱちくりさせたあと、すぐに笑顔に変わった。


「…ははっ!完全に同時だったな、いま」
「でしたね!ふふ、ちょっとびっくりしました」


顔を合わせて、子供っぽく笑い合う。そんな何気ないやりとりに、どこか幸せを感じている自分がいて。
そのあとはヨハンさんが店員さんを呼び止めて注文をしてくれて、頼んだものが届いてからも話は尽きなかった。


そして食事を終えたあと、カフェにグッズショップが併設されているとのことでそちらも見に行った。棚にたくさん並べられている宝玉獣のグッズに、私はまたも感激する。


「うわぁあぁあ、ヨハンさん見てください!ぬいぐるみにボールペンにノート…あっ、お弁当箱まで!これ会社で使おうかなぁ」
「たくさんあるんだなぁ。オレも色々買っちまいそうだぜ」


そう言いながら彼もデザインの違う2つのマグカップを手に取って、それらを見比べている。そんな姿を横から見ていて、ふと疑問に思ったことがあった。


「そういえばヨハンさんって、彼女いるんですか?」
「え?」


思ったことをすぐに口に出してしまうのが私のクセなのだけど、言ってしまってからすぐに、少し後悔を覚えた自分がいたことに驚いた。


そうだ。
こんなに綺麗な顔立ちで、スタイルもよくて優しくて、周りの女性が放っておくはずがないんだ。

会社で私と仲良くしてくれているのだって、こうやって遊びに連れて来てくれているのだって、宝玉獣という共通の趣味があるから、ただそれだけなのかもしれない。

ヨハンさんにとって他意なんてなくて、良き会社仲間のそれ以上でもそれ以下でもないのかもしれない、と思ったら胸がちくりと痛んだ。


ヨハンさんはしばらく私をじっと見ていたけれど、言葉を返そうと口を開いた。


「…オレはー」
「お客様、よろしかったらこちらのカゴをお使いになりますか?」


何かを言いかけたその時、笑顔を浮かべた店員さんがバスケットカゴを2つ持って私たちに差し出してくれた。


「あ、ありがとうございます」


私はお礼を言って受け取り、ヨハンさんも「ありがとう」と言って同じように受け取る。そしてすぐに表情を崩して笑いかけてくれた。


「そうだ、まずは買い物だな。時間ならあるし、ゆっくり選ぼうぜ」
「…そうですよね!よーしっ」


思わぬ拍子で話が逸れてしまった事に、私は少しだけほっとした。あのままヨハンさんと目を合わせたままでいたら、きっと私の心境に気づかれてしまっていたかもしれないと思ったから。

とにかく今は、目の前に並ぶ魅力的なグッズの中からどれを買うか選別することが優先だ。私はバスケットカゴの持ち手をぎゅっと握った。

1/48
prev  next