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「はー!幸せな空間でしたねー!」
買い物を終え、私とヨハンさんはショッピングモールの中を歩いて散策することにした。
結局、あのあと1時間近くも悩みに悩んで買うグッズを選び抜いた。転職したばかりで貯金もそんなにないし、一人暮らしだから決して生活に余裕がある方でもない。
それでも欲しいものは店内に溢れていて、どうしようどうしようと頭を抱える私を、ヨハンさんは文句ひとつ言わずに待っていてくれた。なんて優しいんだろう。
「悩んだ割に結構買ってたよな。そんなに欲しいものあったのか?」
「ありましたよ〜。ぬいぐるみはもちろん、クッションも可愛かったですし…。卓上カレンダーだって会社のデスクに置けるし、タンブラーも使えるなあって。あっ、バッグチャームもあったんですよ!あれは普段用に使おうかな」
「そっかそっか。良かったな」
嬉々として語る私の話を、ヨハンさんは微笑みを浮かべながら頷いて聞いてくれる。
「なぁ、荷物重いんだったら持つけど、大丈夫か?」
「えっ?!そ、そんな事させられません!大丈夫ですっ!」
「遠慮するなよ。男なんだから、ユリより力はあるつもりだぜ」
「あ…」
そして戸惑う私をよそに、ひょいっと荷物を持ってくれたではないか。そんな優しさにも、スマートすぎる振る舞いにも、思わず胸が高鳴ってしまう。
「あ、ありがとうございます…」
「いいって。それよりオレ、ちょっと見たい靴屋があるんだけど付き合ってくれるかな」
「もちろん!ご一緒させていただきます!」
びし、と敬礼のポーズを取ってみせたら、ヨハンさんは可笑しそうに小さく吹き出して、「なんだそれ」と笑った。
そのあとはショッピングモール内の色々なお店を見て回り、散策を堪能した。
もう夕方になるしさすがに休憩をしようという事になり、テラスに出てちょうどいいベンチを見つけて私はそこに腰かけた。
ヨハンさんは「ちょっと待ってて」とだけ言い残してその場を去り、何だろうと疑問に思っているうちにその手に2つの飲み物を手にして戻ってきた。そして私の隣に腰かけながら、そのうちの1つを差し出してくれた。
「喉、乾いたろ。飲もうぜ」
「ありがとうございます。あ、お金…」
「いいって。今日はオレが誘ったんだからさ」
な?と言って差し出された紙コップを、私はもう一度お礼を言ってから受け取った。ストローから一口吸うと、冷たくて甘いりんごジュースが口内を満たした。
テラスから見える階下には、桜の木がモールを彩るように植えられている。それを見て、ああ、春なんだなぁ、とのんびりとおもった。
「…今日は本当に楽しかったです。ステキなところに連れてきていただけて、お話がたくさんできて」
「オレもだよ。ユリを誘って良かったと思った。付き合ってくれてありがとな」
「こちらこそ。…それにしてもヨハンさん、すっごく優しくて紳士ですよね。ちょっと、その…ドキドキしちゃいました」
「…」
えへへ、と照れ笑いを浮かべる私とは対照的に、ヨハンさんは真面目な顔つきでじっと私を見ている。
「…ユリだから優しくしたいと思ったんだぜ」
「えっ…?」
「そのまんまの意味。あとさっきの質問だけど、彼女いたらこんなとこに女の子と2人で出かけたりしないさ」
「…」
「って言ったら…少しはオレの事、意識してくれるか?」
まっすぐな視線。初めて見た真剣な表情。
ヨハンさんは冗談で言っているのではない。どくどくと心臓が音を立て始めたのを感じて、思わずコップを持つ手に力が入る。
彼が何を意図しているのか、何を問うているのか、それが分からないほど私は子供でも鈍感でもない。
けれど余りにも突然の事にどう返していいか分からなくて、この緊張感に包まれた空気の中では何も考えることができなくて。ただ戸惑いを隠せずにいると、ヨハンさんはやがて柔らかく笑った。
「困らせてゴメンな。…そろそろ行こうか」
「あ…」
ヨハンさんは立ち上がり、空になった私のコップをひょいと取ると、自分の分とまとめて近くにあったダストボックスに捨ててくれた。
そして自然な動作で再び荷物を手にすると、私が立ち上がるのを待ってから店内に向かって歩き始めた。
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