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エドさんが最近気に入っているというイタリアンのお店に連れて行ってもらい、そこで食事をした。
私が気を使わないようにと配慮してくれたのか、本格的に敷居の高いお店ではなく、山小屋風の外観をしたビストロだった。
何を食べてもものすごく美味しかったのだけれど、目の前で優雅に、時折不敵に微笑むエドさんのお陰で私の思考はそちらに持っていかれっぱなしだった。
食事を終えてお店から出ると、エドさんは変わらず手慣れた様子で車の助手席を開けて私を座らせてくれた。そして車のエンジンを入れながら、私に尋ねる。
「美味しかったね。気に入ってもらえたかな」
「は、はい!とっても美味しかったです!」
「それは良かった」
にこ、と私の方を見て微笑む。
一体何人の女性がこの笑顔の虜になったんだろう。
そしてわざわざ私なんて誘わなくても、もっと綺麗な女の人たちがエドさんに夢中になっているはずなのに。
そんなことを考えていると、ふと私を見つめるエドさんの視線に気がついた。
「…エドさん?」
「ユリ、君が今何を考えているのか当てようか」
「え?」
「どうしてボクが君を誘うんだろう、と思っているんだろう?」
「(あ、当たってる…)」
「簡単な事だよ。他でもないユリを誘いたいと、そう思ったからさ」
口元の微笑みはそのままに、エドさんの眼光が少しだけ鋭くなり、私は息を飲む。エドさんの方腕がこちらの座席の方へと伸びてきて、それは私の肩をぐっと掴んだ。
「え、エド、さん?」
「そろそろボクを見てくれてもいいんじゃないか、ユリ?」
「何言って…っ!」
一瞬だった。
エドさんの顔が視界いっぱいに広がったと思うと、次に唇に温かくて柔らかいものが押し付けられる。
キスをされているんだ、と理解した瞬間にエドさんの肩を押し返そうとしたけれど、まるで意に介さない様子だった。
「っん…」
何度か角度を変えて重ねられた唇は、次第に湿り気を帯びてちゅ、と水音を立てる。上唇と下唇をやわやわと挟み込まれるように吸われて、思考が追いつかずにくらくらする。
そんな状況だというのに、なぜか脳裏にはヨハンさんの姿が浮かんで、胸がぎゅっと苦しくなる。
ー助けて、ヨハンさん。
「っはぁ…」
ようやく唇が離された頃には、お互いに少し息が上がっていた。それでもまだ至近距離にあるエドさんの表情はどこか熱っぽくて、初めて見るものだった。
「…な、んで…こんな事、するんですか」
「したいと思ったからさ」
「意味が分かりません…っ」
どくどくと波打つ心臓。
まだ唇に温もりが残っていて、私は手の甲でそれをぐっと拭った。
「そうやって…っ、私の反応を見て楽しんでるんですか?」
「…違う。そんな事していない」
「じゃあなんで…!」
私の肩を掴んでいたエドさんの手が、ゆっくりと私の頬にうつり、その指先が触れた。
「少なくともそんな顔をさせたいからじゃない。悪かったよ。…ボクも余裕がなかった」
「…エドさん…?」
そういえばそうだ。いつも見ていた、余裕たっぷりの表情はどこへ消えてしまったのだろうと思ってしまうくらい、今のエドさんは別人だと思った。
「すまなかった。…このまま送るよ」
私から離れ、シートベルトを締めるとハンドルを握る。
ひとつ小さく息を吐くと、エドさんは車のアクセルを踏み込んだ。
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