02
会社の入り口に到着すると、そこには1人の女性が立っていた。金色の長い髪に、透き通るような白い肌。彼女は私を見ると軽く会釈した。
「今日から入社する子よね?」
「あっ、はい!よろしくお願いします」
「そんなにかしこまらなくていいのよ。私は明日香。それじゃ行きましょうか」
はい、これはあなたのIDカードよ、と言って、ネックホルダー付きのカードを手渡される。基本的に入室する時に必要になるそうだ。
そしてエレベーターで2階へ上がり、手前の部屋に案内された。
「あなたの席はそこよ。えーっと…」
「あ、ユリです」
「そう、じゃユリって呼ばせてもらうわ。私の隣ね」
明日香さんに指定された席を見て、私は頷く。
こんな美しい方の隣で仕事ができるなんて、私は前世でどんな徳を積んだというんだろう。神さま、ありがとうございます。
「この部屋は大きく別れて2つの課があるわ。私たち事務課と、あっちの方の席の人たちが営業課」
「はい」
「あそこの窓際の席がクロノス部長の席ね。あとで給湯室とか食堂、売店も案内するわ」
「は、はい!よろしくお願いします…!」
「ああ、タメ語でいいのよ。私と同い年なんですってね。部長から聞いてるわ」
「ええ?!同い年?!」
驚愕でしかない。
目の前の美女ときたら、そこにいるだけで花が咲くような美しさである上、スタイルがとてつもなくいい。
グレーの縞のスーツを完璧に着こなし、その胸の大きさと細い腰のラインときたら。職業がモデルでないことが不思議なレベルだった。それに比べて私のスタイルときたら、平凡すぎるくらい平凡なものだった。
「なんて残酷な世界…」
「?何か言った?」
「いえ、なんでも」
給湯室や売店を簡単に案内してもらう。
やがて始業時間が近くなり、まばらに人が着席しつつあった。この部屋にいるのは全部で20人程度だろうか。
先程話に出た、クロノス部長が入室して席についた。そして時計をちらりと見ると、パン、と手を叩いた。
「少しだけ早いけど、始めるノーネ。
今日から入社してきた社員がいるノーネ」
「あ、は、はいっ!」
部長がこちらを見たので、私は慌ててその場に立った。室内の視線が一斉に私に集まる。注目されるのは苦手だ。
「事務課のユリです。中途採用で本日から入社しました。どうぞよろしくお願いします」
当たり障りのない挨拶をして頭を下げると、パラパラと室内に拍手が起こった。そのまま席に腰掛ける。
「我が社の一員として歓迎するノーネ。それでは始業開始ナノーネ!」
部長の言葉に、いっせいにパソコンのキーボードを叩く音が室内に響いた。明日香さんに仕事を教えてもらうべくメモ帳とペンを取り出す。
「やぁ、君、さっきの!」
「え?あ…!」
声を掛けられてそちらを見ると、先程キーホルダーを拾ってくれた男性がいた。
「いやぁ、まさか同じ会社だとは思わなかったな。オレはヨハン。営業課だ。よろしくな」
「は、はい…!よろしくお願いします」
差し出された手を軽く握り返して握手を交わす。さっきは急いでいて気がつかなかったけれど、彼も恐ろしく整った容姿とスタイルを兼ね揃えていた。なんだここは。入社条件に「容姿端麗」という項目でもあるのか。
「(…あれ?でもそしたら私は受かってないか)」
「?どした?」
「あ、いえなんでも!」
「なんか分からないことあったら聞いてくれよ。じゃあな!」
爽やかにそう言い残し、彼は去っていった。
明日香さんはその様子を見送りながら私に尋ねる。
「ヨハンと知り合いだったの?」
「いえ、ついさっき、落としたキーホルダーを拾ってもらったんです」
「なるほど、そういうことだったのね」
まさかの宝玉獣好きの彼と同じ会社だったとは。これから楽しい日々が送れるかもしれない、と私はこっそり顔を綻ばせた。
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