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毎年行われるという夏祭りはたくさんの人で賑わっていて、さまざまな屋台が連なっていた。


「何食おっかな〜。たこ焼きと焼きそばとフランクフルトとじゃがバターと…」
「十代、あなたはホントによく食べるわよね」


先頭を行く十代さんと明日香さんの会話を聞きながら、私とヨハンさんはその後ろに続く由季さんの隣に並んだ。


「聞いてた通り、すごい人ですね」
「そうだね〜。毎年来てるけど、今年も大盛況って感じだぁ」
「ヨハンさんも毎年来てるんですか?」
「いいや、オレは去年が初めてだったよ。十代達に誘われてさ」
「そうなんですか」


そんな会話をしながら前を見ると、さっそく十代さんがたこ焼き屋さんの屋台に並んでいるのが見えた。「みんな、たこ焼き食べる?」と明日香さんが尋ねてくれたので、私たちは顔を見合わせてこくりと頷いた。

しばらくしてから出来上がったたこ焼きを受け取り、串を刺したたこ焼きを由季さんに1つ差し出してから、ヨハンさんは「あっ」と小さく声を上げた。


「どうしたの?」
「これ、串が2つしか入ってなくてさ」
「ホントですね…あ、私、さっきのお店行ってもらってきましょうか?」
「いいよ。大丈夫」
「でも…」
「こうすりゃ大丈夫だよ」


一体どうするんだろう、と見ていると、ヨハンさんはたこ焼きに串をぷすりと刺し、それを私の口の前に差し出した。


「へ?!」
「オレとユリで一本使えば問題ないだろ」
「で、でも…」


涼しい顔をして手を伸ばすヨハンさん。
その横では由季さんがじっとその様子を見ている。

ここで変に動揺したりすると、ヨハンさんへの気持ちが由季さんにバレてしまうと思い、私は照れながらも口を開けてたこ焼きを口に含んだ。


「美味いか?」
「ん、美味しい…です…」
「そっか。じゃオレも食べよっと」


同じ串でたこ焼きを刺すと、それを食べながら「ん、イケる」ともぐもぐと口を動かしている。


「(こ、これ間接キス…)」
「もうヨハン、女の子に対して無神経だよ〜」
「え、どうして?」
「だってそれ間接キスになっちゃうじゃない。ユリちゃんに謝りなよ〜」


軽い調子で笑いながら、由季さんが言った。
するとようやくその事に気付いたのか、ヨハンさんは一気に顔を赤くさせた。


「あっ!そうか。悪かった…」
「だっ、大丈夫です。嫌じゃないです」
「全然気付かなくて、オレ…」


そんなに必死に謝られる方がよっぽど困ってしまう。私は別に嫌だなんて一ミクロンも思っていないのだから尚更だ。


「おーいみんなー、次はかき氷食うぞー!」


その時十代さんの陽気な声が聞こえてきて、私は「はーい!」と返事をして慌ててその場を逃げ出した。




境内の端の方に休むスペースを見つけて、私たちは木のテーブルを囲んでそこに座る事にした。

目の前にはかき氷、フランクフルト、焼きそば、牛串、イカ焼き、焼きとうもろこしなど、十代さんが主にチョイスした品々が所狭しと並べられている。


「…すごい食欲ですね、十代さん」


次から次へと平らげていく十代さんの様子を見て、私はぽつりと呟いた。


「そうよね。去年は何件ハシゴしたんだったかしら?」
「確か23件だよ。ホント、大食いファイター並みだよな」
「そうだね、でもまだ食べるって言って聞かなかったよね〜」
「…」


そうだ。私以外のみんなは去年もこの場所に来ているから、その時の思い出がある。けれど私はその時ここにいなかったからその思いを共有する事はできない。

その時はほかに誰と夏祭りに来たのだろう。ヨハンさんはその時どんな風に笑って、楽しそうにその時間を過ごしたのだろう。

そう思ったら、少しだけちくりと胸が疼いたのを感じた。




「そうだ!ねえヨハン、去年やったヨーヨー釣り、リベンジしに行こうよ」


由季さんがふと思い出したように、両手を叩いた。


「ああ、去年全然取れなくて悔しかったもんな。行こう」
「やった〜!」
「なぁ、せっかくだしユリも一緒に行こうぜ」


席を立ち上がった由季さんとヨハンさん。
ヨハンさんは私を見て、そう言ってにっこりと笑いかけてくれた。


「あ、いえ…私は大丈夫です。2人で行ってきてください」
「え…そうか?じゃあ行こうか、由季」
「うんっ。よーし、ちょっと行ってくるね、みんな!」


由季さんは楽しそうに手を振ると、ヨハンさんと並んで人混みの中へ消えていった。


「楽しそうね、由季」
「そうだな。ヨーヨー釣りってそんなに楽しいか?オレわかんねーなぁ」
「そういう事じゃないのよ。…全く、アンタってホント鈍いわよね、十代」
「へ?」


頭にクエスチョンマークを浮かべる十代さんを見て、明日香さんはやれやれとため息をついている。その会話を聞いて、私はひとつのことを確信した。

由季さんはヨハンさんの事が、好きだということだ。


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