06


そのあとすぐに部屋をあとにし、下で待っていてくれたヨハンさんのところへ向かい合流した。


「ごめんなさい、お待たせしました!」
「いや、全然待ってないよ」


そもそも誘ったのオレだしな、とヨハンさんは軽く笑った。


「じゃ行こうぜ。とりあえず駅までは一緒だよな?」
「はい!」


並んで歩き始める。
入社初日から私はこんなイケメンと肩を並べてもいいものなのだろうか。


「(顔ちっさ…スタイルやば…肌白…)」
「なぁ、入社初日はどうだった?」
「(ていうか瞳が綺麗すぎる…この方美術品かなにか?)」
「ユリ?」
「あっすみません!少し考え事をしてました!」
「考え事って?」
「あーっ…。あっそうそう!宝玉獣のことを!」


まさか会って初日の仕事仲間に、貴方が美しすぎて見惚れてました、なんて変態発言をするわけにもいかない。慌てて、ぱっと思いついた宝玉獣についての話題を振った。


「ああ!その話もしたかったんだ。
朝のアニメは見てる?」
「もちろん見てますよ。さすがにリアタイできる放送時間ではないので、全部録画ですけど」
「本当か?!いやー、実はオレも欠かさず見てるんだ」


照れたように、でも嬉しそうな表情でヨハンさんは軽く頬を掻いて見せる。


「あれって一応子供向けのアニメだろ?オレみたいないい歳した大人が見てんのって、ちょっと変かなって思ってたんだ」
「そんな事ないです!!大人だろうが子供だろうがお年寄りだろうが、宝玉獣は全人類に愛されるべきと私は思ってます!いえ、もう全宇宙に!」


たしかに子供向けのショートアニメだとは思う。けれど宝玉獣たちそれぞれのキャラクターはとても素晴らしくて、あの互いを思いやっている「家族感」がたまらなく胸を打つのだ。

私の本気の力説に少し驚いたのか、ヨハンさんは少し目を瞬いていたけれど、すぐに顔を綻ばせた。


「っはは。全宇宙って!ユリって面白いな」
「そ、そうですか?思ってる事を言っただけなんですが…」
「オレの周りにそんな事言うヤツいないぜ。あー、笑った」
「でもそれくらい宝玉獣を愛してるんです。だからキーホルダー拾ってもらえてほんとに良かった…。そういえばヨハンさんも、グッズとか集めてるんですか?」
「もちろん!キーホルダーもぬいぐるみも、なんならフィギュアもあるぜ」
「フィギュアまで…!」
「その中でも1番の自慢はレインボードラゴンかな。オレの宝物さ」
「レ…レインボードラゴン?!」


思わず絶句した。
レインボードラゴンのフィギュアといえば、過去にただ一度だけ製造されたことがあるもので、その値段といえばもちろんものすごい額だったのだけれど、それ以上に入手方法が困難極まりなかったのだ。

なんと製造はたったの1つしかされず、手に入れるためには抽選で選ばれるほかない。当時応募は殺到し、私もその中の1人だったのだけれど当然ながら外れてしまった。
それを手に入れた人物がたった今、私の目の前にいるなんて。


「え?神…?」
「神ってなんだよ。やっぱユリって面白いな」


そんな話をしながら歩いていると、あっという間に駅に辿り着いてしまった。


「あー。まだまだ話足りないな」
「ほんとですよね」
「まぁ、引き止める訳にもいかないしな。じゃあまた」
「はい!お疲れ様でした」


軽く頭を下げると、ヨハンさんは「気をつけてな」と声をかけてくれた。帰宅する人々の波の中に飲まれていくその背中を、私は見えなくなるまで見送った。


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