07


次の日も同じように出社し、明日香さんに仕事を教えてもらいながら業務を行っていった。

昨日は一緒に帰れて楽しかったということを伝えようと、ヨハンさんの姿を探したけれど見当たらない。


「あの、今日はヨハンさんってお休みですか?」
「ヨハン?ああ、今日は会社に来ないで、取引先に直行してそのまま直帰って聞いてるわよ」


明日香さんがそう教えてくれた。
そうか。営業課の人は毎日会社に出社するというわけではないんだな、と納得する。


「ユリちゃん、もしかしてヨハンのことが気になるの?」
「由季さん。いえ、昨日は宝玉獣の話しができて楽しかったですって言おうとしてただけです」
「そっか、なるほどね」



お昼の時間になり、休憩を取れる事にまだ違和感を覚えてうろたえる私を明日香さんが食堂へと引っ張っていってくれた。


「…やっぱり信じられない…。お昼時のこの時間に、ご飯を食べようとしている自分が」


席に着き、目の前で湯気を立てているきつねうどんをじっと見つめていると、由季さんがくすっと笑みをこぼした。


「休憩時間なんだから、ご飯を食べられて当たり前なんだよ?」
「そ、そうですよね…!いただきます」


温かい出汁が身にしみるようだ。
うどんの美味しさに感動していると、あたりが少しざわついたのが聞こえてきた。疑問符を浮かべていると、明日香さんが「エドが来たみたい」と教えてくれた。


「珍しいわね。食堂に来るの」
「そうだね。いつも外で食べてくるのに…」


振り返ってみると、確かにそこにエドさんの姿があった。そして軽く周囲を見渡し、私の姿を確認すると、こちらへ向かってくるではないか。


「やあ、探したよ」
「えっ…?私ですか?」
「そう驚くなよ。今日のことで話そうと思ってね」
「今日?…あっ」
「もしかして忘れてたのか?」
「いっ、いえいえとんでもない!」


そうだ、昨日確かそんな話をした。
正直に言うと、ヨハンさんと宝玉獣について話したことが楽しすぎて、すっかり忘れていたのだ。
けれどエドさんは不快そうな顔を浮かべるどころか、軽快に笑った。


「ははっ、ま、思い出してくれたようで何よりだ。…それで、今日なんだけど」


エドさんは身をかがめ、私の肩に軽く手を置いた。そして耳元に顔を寄せて小さく囁く。


「就業が終わったら、会社の裏の駐車場に来てくれ。そこで待ってる」
「(近い…!)はっ、はい!分かりました」
「楽しみにしてるよ。じゃ」


にこりと笑うと、エドさんは去っていった。
どきどきと心臓が音を立てている。エドさんは自分の顔の良さを自覚した上でわざと顔を近づけてきているんじゃないだろうか。

疑問符を浮かべている明日香さんと由季さんに何かを聞かれる前に、冷めないうちにと私はもう一口うどんをすすった。

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