過剰にスキンシップ


「んもー!可愛いモブ君モブ君モブ君!」
「ちょ、ユリさん…」


場所は霊とか相談所。
私はモブ君に会うため、たまにこうしてここに通っている。

霊幻さんは依頼者の話を聞くために近くの喫茶店へと出向いているため、今は私とモブ君の2人きりだ。

それをいいことに、私は好き放題モブ君を可愛がりまくっていた。



ほっぺを指先でぷにぷに。柔らかくてもちもちしてて可愛い!

頭をなでなで。さらさらの髪の毛と、「んっ」って感じで目を閉じるモブ君。可愛い可愛い!

たまらなくなって抱きしめると、「わぁっ」と言って顔を真っ赤に染めるモブ君。可愛い可愛い可愛い!


「ねえモブ君〜なんでそんなに可愛いの?もう犯罪級なんですけど!」
「は、犯罪って…ちょっとユリさん、離れてくださ…」
「あ、ごめんね苦しかった?」


少しきつく抱きしめすぎてしまっただろうか。
そう思って慌てて身体を離すと、「…いえ、苦しいとかじゃなくて…その…」と頬を染めてもじもじするモブ君。


「当たってたから…ユリさんの…胸…」
「っ!」


最後の方なんてもう消え入りそうな声で、耳まで赤くして懸命に言葉を紡いでいる。そんな姿を見てしまってはもう、抑えることができなくなってしまうじゃないか。


「っっ可愛い〜!!もう無理私モブ君のこと襲っちゃいそう!!」
「え…?お、襲うって…」
「あ、ごめんね、モブ君にはまだ早かったかな」


いけないいけない、モブ君はまだ中学生なんだ。私みたいな汚れた(?)女子高生の色に染めてはいけない。


そんなことを思案していると、不意にぐっと肩を押される感覚がして、ぐらりと視界が揺れた。

訳が分からないままでいると、視界一杯にモブ君の顔がある。身体を起こそうにもモブ君が私に覆いかぶさるような態勢をとっていて、しかも両腕は固定されている。

…要するに、押し倒されているのだ。


「…ユリさんは、誰かに襲われたことがあるの?」
「え?モ、モブ君…?」


さっきまでのおどおどした雰囲気とは打って変わって、真剣な表情を浮かべている。少しふざけ過ぎてしまったからそのお返しなのかと思いきやそんな風でもない。


「ねえ、答えてよ。襲われたことがあるの?」
「な、ない!ないよ」


初めて見るモブ君の顔と醸し出す雰囲気に押され、背中にひやりとした感覚が走った。
少し怖さすら感じた私は、とにかく上からどいてもらおうと手早く返答を返す。

するとモブ君は安心したように「良かった」と呟いた。


「じゃあユリさんを初めて襲うのは、僕ってことになるね」
「え…モブ君…?」
「僕だって男なんだよ、ユリさん」


そのままモブ君の顔がゆっくりと近づいてくる。ああこのまま唇同士が触れ合いそうだー、と思った時、モブ君がぴたりと動きを止めた。


「…師匠たちが戻って来る」


そして私を一瞥し、両手を解放したあとに優しく身体を起こしてくれた。そしてそのまま、彼は私の耳元で小さくささやいた。


「…続きは今度、ね」
「っ!」


そして名残惜しそうに私の頬に唇を寄せると、何事もなかったかのように受付の椅子へと腰掛けた。その直後、霊幻さんとエクボが「戻ったぞー」と事務所のドアを開けて中へ入ってきた。


「ん?なんだユリ、顔が赤ぇな」
「…な、なんでもないよエクボ」


「風邪でも引いたか?」と心配してくれるエクボをよそ目に、私はドキドキと苦しいくらいに高鳴る胸をそっと抑えた。



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