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向かい合って、慎也君が買ってきてくれたプリンを口に運ぶ。ケーキをすすめたけれど、コーヒーだけでいいと言って彼は食べなかった。



小さなローテーブルを挟んで、他愛無い話をした。大学はどうかとか一人暮らしはどうかとか。

警察官としての仕事の事とか、実家の両親は元気にしているかとか。

一通りそんな話をしたあと、慎也君はじっと私の顔を見て口を開いた。




「ーで、どうした?」
「えっ、何が?」
「目。思いっきり腫れてんだろ。何かあったのか?」
「………」


慎也君の登場ですっかり忘れていた。
そうだ、ついさっきまで大泣きしてたんだ。


どう説明していいのか分からなくて、私はカップに手を添えたまま俯く。頭に浮かぶのは槙島さんの姿。


切なさが滲んだ、迷子の子供みたいなあの声が忘れられない。縋り付くような腕の感触も、脳裏に焼き付いて離れない。

この感情がなんなのか分からないけれど、思い起こすだけで胸が苦しくなって、目頭が熱くなってくる。



「…男か?」
「えっ?!ええと…?」


そうなような違うような。
慎也君は昔から人一倍鋭いから困ってしまう。

視線を泳がせてどう説明すべきか悩んでいると、慎也君はフッと笑って私の頭を優しく撫でた。


「俺がどうこういう立場じゃないが、あんま泣かされるようなら俺に言えよ」
「慎也君…」
「昔っから、お前は危なっかしくて心配なんだ」


慈しむような視線に、胸が暖かくなる。

暖かくて大きな手。
この感触は本当に久しぶりで、心がほっとして、私を安心へと導いてくれる。ああ、私の大好きな慎也君の手だ。

嬉しくて私は微笑み、そっと目を瞑った。






「じゃ、そろそろ行くよ」
「…うん、つい話し込んじゃったね」
「ああ。いい気分転換になった」


スニーカーを履き、玄関の戸を開ける慎也君。その大きな背中を見つめながら思う。


私は彼の事がずっと昔から好きだ。大好きだ。…ううん、そうじゃない。違う。


「ね、慎也君」
「ん?」
「カノジョできた?」
「…さあな。大人をあんまからかうなよ」
「えー」


くしゃ、と最後に頭を撫でてくれると、慎也君は軽く手を振ってその場から去っていった。

その場に残されたのは静寂と、慎也くんがついさっきまでいた香り。でも私はもうそれに胸を痛めることはない。




私は慎也君の事が、ー大好きだった。


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