連れ去りたい場所A
街中にたどり着くと、娯楽施設と一体型の大型ショッピングモールへ向かった。狡噛さんがこんなところへ来たがるなんて意外でしかない。
「あ!あの雑貨屋さん見てもいいですか?ずっと来たかったけどなかなか来れなくて」
「いいさ。俺はここで待ってるから、ゆっくり見てこいよ」
「はい!」
せっかく来たと言うのに、私が見たいところを見てばかり。狡噛さんは喫煙所に行ってタバコを吸ったくらいで、あとは私の買い物にほぼ付き合わせる形になってしまった。
次に訪れたのは、最近話題のランチが食べられるカフェレストラン。狡噛さんがこんなところに来たがるとは意外だった。
「…意外すぎます」
「何がだ?」
「狡噛さんがここのお店の存在を知ってるなんて。イメージと合わなさすぎて」
「そりゃそうだ、俺の趣味じゃないからな」
パスタやオムライスの写真が載ったメニューを、いつもどおり真顔で開く狡噛さん。
「え?趣味じゃないって…じゃあなんで…」
「ずっと来たがってただろ、ユリ」
「…」
そういえば、仕事中に縢君に話したかもしれない。
『ユリちゃんはさー、彼氏とデートするとしたらどこ行きたいの?』
『そうだなぁ…まず公園でまったりするでしょ、それからデパートとかでお買い物して…
お昼ご飯を一緒に食べたい!私ずっと行きたかったお店があってね…』
『へー。デートのど定番って感じ。女の子だねぇ』
…あの時確か、狡噛さんは刑事課大部屋にいたはず。その会話を聞いていたとしたら。
そのことに気付いて、鼓動が少しずつ早くなっていくのを感じる。
「狡噛さん…もしかして、私の行きたいところ全部知っててくれて…」
「そういうこと。気づくのが遅いな」
店員さんを呼び止めて注文をしている狡噛さん。その横顔を見ながら、頭の中で忙しく考えた。
ーじゃあ…これって、やっぱり。
「デート」なんじゃ…。
「…」
「ユリ?」
途端に身体中に緊張が走った。
目の前にいる狡噛さんに全神経が集中してしまって、逆に目を合わせることができない。
おかしい。さっきまで普通に話せてたし、自然に振る舞えてたのに。
「(…オムライス、ちゃんと食べられるかな)」
胸がドキドキして、苦しくなってくる。
目の前で肘をついて私を見つめるその視線に晒されると、何故か困ってしまう。
やがて運ばれてきた料理を、私はなんとか残さずに完食する事が出来た。
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