連れ去りたい場所C※



チェックインを済ませて、俺とユリはホテルの部屋へ入った。


「水でも飲むか?」
「はい…」


ユリをベッドに座らせ、小さな冷蔵庫から水を取り出す。それを手渡すと、緊張した面持ちで彼女はそれを飲み下した。


ここへ連れてきたのは少し強引だっただろうか、と自問する。
ユリは俺の気持ちに気づいたのはついさっきのようだったし、目の前にいる彼女は先程から視線を合わせようとはしない。


けれど抱かれる事に「嫌じゃない」と確かに答えてくれた。その言葉を聞いて内心少しホッとした辺り、俺は彼女に相当入れ込んでいたらしい。



「ユリ」
「は、はいっ」
「意志の確認だ。本当に嫌じゃないんだな?」
「……」


彼女はこくりと小さく頷く。
隣に座り、そっと肩を抱くとぴくりと身体を震わせた。ガチガチに緊張している。


「こっちを見てくれ」
「…」


遠慮がちに向けられ、絡む視線。
それだけでゾクリと俺の中の欲が疼く。今すぐにその服を全て脱がせて、身体中にキスを落として、俺の存在をユリに刻みつけてやりたい。

頬に手を添えてその唇を指先でなぞる。
柔らかくて甘そうだ。なんて美味そうな果実だろう。


「こ、うがみさ…?」
「なんだ?」
「私、その…こういうの全然、慣れてなくて、えっと…」
「怖いか?」


頷きが返ってくる。
俺はユリの身体を抱き締め、落ち着くよう囁いた。


「…優しくする」








シーツの上で男女が絡み合う衣擦れの音。
キスを繰り返しながら、ユリの衣服と下着を全て脱がしていく。


「やっ…ん、狡噛さ…っ」


彼女の唇は想像通り甘くて柔らかい。
何度も音を立てて吸って食んでも物足りなくて、舌を執拗に絡ませていく。

俺の舌先に触れる彼女の舌。
深い口付け。互いの唾液が混ざり合い、ちゅ、と水音が響く。


彼女の首筋から鎖骨にかけて、唇を這わせていく。片方の手は指を絡ませ、空いている方の手でユリの身体に優しく触れていく。


男のものとは違う、しなやかな曲線。
丸みを帯びたライン。
白くて滑らかな肌。

彼女の裸体は何度か頭の中に思い描いた事があるが、実際は想像していたよりもずっと美しくて蠱惑的で、俺の正気はどんどん奪われていく。



「んぁっ…ゃ、…」
「気持ちいいか?ここ」


胸を軽く揉み、その先端に舌先を這わせてから吸い上げると、ユリの甘い声が上がった。

ちゅ、ちゅ、と慈しむように繰り返し吸い上げると、無意識ではあろうが、彼女がもどかしげに膝をすり合わせた。

ーよかった。ちゃんと感じてくれている。

指先でそこを軽く摘み、指の腹で押したりさすったりする。そうしながら彼女を見ると、顔を真っ赤にしながら、与えられている快感に耐えている様子が見えた。

その表情があまりにも可愛らしくて、俺の下腹部は強く反応する。


「んん、ふぁ…、やっ…ぁっ」
「…可愛いな、ユリ」


腰から恥骨にかけて手を滑らせていく。
中心に触れようとすると、すっかり息の上がったユリが俺の手を静止させた。


「どうした?」
「…っそこ…いや…恥ずかし…っ」
「大丈夫だ。…俺にお前の全部を見せてくれ」


お前の全てを愛でて、全てを味わい尽くしたい。頭の上から爪先まで余すことなく。

ユリはそんな俺の心情を汲みとったのか、膝の力をそっと緩めた。





そこはもう十分に濡れていた。
これならゆっくり慣らす必要もないだろう。

指を一本侵入させ、少し折り曲げて出し入れを繰り返してみる。くちゅくちゅと淫らな音が室内に反響する。


「ゃあっ、あっ、んんっ…」


指を2本に増やし、出し入れする速度も次第に上げていく。ユリの嬌声が次第に大きくなっていき、締め付けがきつくなったのを指に感じた。


「こうがみさ、も、私…っ、ぁ、あ、やぁ…っ!」
「いいぜ。…イけよ」
「ん、ん、あぁ………っ!!」


悲鳴にも似た声を上げると、ユリはビクビクと身体を跳ねさせ、そのあとすぐに脱力した。

ハァハァと肩で大きく息をしながらぐったりしている。俺はそれを見下ろしながらワイシャツを脱ぎ捨て、スラックスと下着をベッド下に放り投げた。

すでに誇張しきってガチガチに硬くなったソコは、ユリの中に入りたくて限界だと声を上げている。
達したばかりで申し訳ないが、彼女の息が整うまで待ってやる余裕はなかった。



「ユリ、挿れるぞ」
「…ん、は…い」


恥ずかしいのか、俺から顔を逸らしている。俺は彼女の両膝に手をやり大きく開かせると、己を中心へと沈めていった。


「んんっ、ぁ、…!」
「…悪い。痛いか?」
「少しだけ…でも、大丈夫、です…」
「…ん。わかった」


彼女の様子を見つつ奥へと腰を進めていく。やがて全てが中に収まり、俺は大きく息を吐いた。
そして彼女の顔の両脇に肘をつき、覆いかぶさる体勢をとると、再びキスを繰り返す。


口と口の隙間から漏れる甘い吐息。
彼女の額はしっとりと汗ばんでいて、それを指先で拭うようにすると、ユリは微かに微笑んだ。


「狡噛、さん」


俺の首にゆるく両腕を回す。
そして彼女は俺の耳元で、「好きです」と小さく囁いた。
それはずっと聞きたかった言葉。


「…俺もだ、ユリ」


彼女の存在が欲しくて仕方なかった。
けど、執行官の恋愛は不毛。まして監視官との恋ともなれば尚更。認められていないわけではないが、成就することはほぼないと言っていい。

ユリはその事実を知らないだろう。




「…動くぞ」
「!んんっ…、ふ…」


連れ去りたかった。
猟犬である俺にとっての檻であるあの場所から。
しかしそれが叶わないことくらい分かっている。だからせめて彼女と初めて肌を合わせるのは、檻の外がいいと思った。


「あ、ぁあ、あっ、あっ、…んぁ…っ!」
「…ハァ…ッ…ユリ…!」


腰の動きを早めていき、力強く律動を繰り返す。ユリの喘ぎ声はどんどん大きくなり、寄せる快感から逃れようとでもするように、俺の背中にしがみついた。


「ぁっ、あ、も、だめ…っ、ん…!」
「く…っ」


俺の方も限界が近づいている。
腰を強く打ち付けたまま、貪るようにユリの唇を味わう。

爪の先が食い込むのではないかと思うくらい、俺の背中に回ったユリの手に力が込められる。


「…ッ…!」


びくりと背中をしならせて彼女が達したのと、彼女の中に勢いよく欲望を吐き出したのは、ほぼ同時だった。





行為のあと、ユリは緊張の糸が切れたように眠ってしまった。俺の腕の中で小さな寝息を立てている。そのあどけなさの残る寝顔を心から愛おしいと思った。


「…猟犬と飼い主、か」


一人呟く。
檻から逃れられたなんて、もちろん思っちゃいない。勘違いだってしちゃいない。

けどユリを抱いた今日この日、俺は確かに、一人の「男」として彼女を愛することができた。

そう、強く感じた。




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